第十四章 エピローグ

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第十四章 エピローグ

「じゃあ、帰りますか」  クラスメイトが帰った後、三人で教室の机を元に戻して、レンが言った。  それから、思い出したように振り向いて、 「あ、それから、雅。 この際だから言わせてもらうけど」  と言い出した。 「なによ?」 「俺は女の子と話をしていただけでナンパなんかしていない。 おまえは早とちりとか勘違いが多すぎ。」 「どう見てもナンパでしたけど?」 「だからそれが勘違いなんだって」 「誰が見たってあれはナンパです。 ラブレター書かせたり、意地悪な事するし。 性格も悪い」 「その話は関係ないだろう。 蒸し返すな。 雅がオレの事好きか知りたかっただけだ」 「私だってレンが私の事どう思っているか知りたかったから石川くんの告白を受けたんだからね!」 「どっちもどっちだけと思うけど」  ほのかが困ったように首を傾げる。 「グズでノロマで意気地なし! だいたい、あなたがはっきりしないからこの状態を作ったのよ。 自覚して」 「おいおい。 さっきの雰囲気は何処に行った? オレの事好きじゃなかったのかよ。 いい加減、その子供っぽい性格止めろよ?」  ヒートアップした私に彼の声は届かない。  言いたいこと言えたノリで、日頃言いたかった事をぶちまけてやろう。 「レンって、いっつも女の子のところにいるじゃない! 高校生にもなってそれしか頭にないの?」 「健全な高校生だからこうなるんだろ? オレをいつまでも小学生扱いすんな!」  ああ、そう来ましたか。  それなら、こっちから上から目線で言ってやる。 「あれ? 小学六年生にもなってお母さんと一緒じゃないとお風呂に入れない子は誰だっけかなー?」 「今それ言うか? お前だって、おれんちにお泊りに来た時、幽霊が怖いって夜中起こしてトイレに連れて行ったよな。あの時おまえ、漏らしてたんじゃん」 「あーーーー!!!!!それだけは、秘密にするって約束したのにーーー!!!!!!」  信じらんない!  怒りを込めてレンの腕をバンバン叩く。 「大丈夫だって。 見た目のイメージと違って逆に可愛らしいかも」  レンが手を叩いて笑う。  こいつ!!また見た目の事を!! 「嫌い!!嫌い!!もー!レンなんかだいっっっ嫌い!!!」  『可愛いらしい』  レンにそう言われると「特別」な存在になった気がする。  他の人から言われるのと全然違う。  それは私にとって彼が特別な存在だからなんだと思う。 「やれやれ、また振り出しに戻った感じね。 でも大きな前進かな」  ほのかが笑って首をすくめた。  本当に好きな人なら、一つくらい嫌なところがあったって本気で嫌いになんかなれないよ。  レンがこっちを向いて笑ってくれた。  人は、大きく弧を描いて付いたり離れたりしている。  出会ったり、別れたり、また出会ったり。  でもそれは、同じ繰り返しのようでも螺旋階段のように少しづつ前進しているのかもしれない。  そうやって私達は大人になり、未来へと向かっていくのだ。  そして私は今、 彼の下手くそなラブレターを真っ白なウエディングドレスのポケットに、 彼と真っ赤なバージンロードを歩いている。  出席者席でほのかが嬉しそうに笑っている。  そう。 あの、高校時代の結婚式の続きをやるように。 (おわり)
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