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第三章 あいつ
「よっ、雅(ミヤビ)!」
急に呼びかけられ振り向いた。
「雅 七瀬(ミヤビ ナナセ)!
七瀬 雅(ナナセ ミヤビ)?
どっちが名前だか苗字だか分からんぞ!」
ああ、この幸せな気分をぶち壊す男が現れた。
ニヤけ顔で近づいて来たこの男。
「椎名 蓮(シイナ レン)」
身長は170cmとさほど大きくないが、毛先に金髪メッシュを入れてピアスをしているのでオシャレに見え、「イケメン」と呼ばれて女子からの人気が高い。
顔もまあ、悪くないのでそうらしいのだが、私から言わせると「普通」だ。
「うっさいな!分かってて言うのやめて!」
どっちが苗字か、なんて、こう言う呼び方をするのはレンだけだ。
「怒んなよ。オレも二年から雅と同じクラスなんでよろしくな!」
そっか。忘れていた。
ほのかと同じ、二年から同じクラスになるんだった。
幼稚園から小学校、中学校、高校と、同じの学校に通い、何度も同じクラスになっている。
イケメン高校生としてインスタの写真が話題になったとかで、本人もその気になっており全くもって鬱陶しい。
レンと最初に会ったのは幼稚園の時。
何となく仲良くなって一緒に遊んだりしていたのだが、
ある時、隣のうさぎ組の女の子(音羽だったか美桜だったか、おーちゃんと呼ばれてた)に告白された時、女の子だと説明していたのを聞いていたレンが言った一言。
「お前、女だったの?」
にショックを受け、心の傷となった。
ずっと私を男の子だと思っていたらしく、目を見開いて、口を開けたままでいた顔を今でも覚えている。
当時、普通の女の子より髪は短かったとは言え、男の子と間違えるとはあんまりな。
全くもって無神経な男だ。
「隣の子、めっちゃ可愛いけど、誰?紹介して!」
レンが身を乗り出してほのかの顔を覗き込む。
来た来た。
相変わらずチャラいな。
ほのかも嫌がってるじゃん。
友達です。
でも、あなたに紹介なんてしません。
私の癒しの時間を邪魔しないで。
手でシッシッと追いやって、ようやく退散してもらった。
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