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01
アラームが鳴り出す5分前に目が覚めた。
カーテンの隙間から柔らかな朝日が漏れ、
窓際に置いたアレカヤシがキラキラ光っている。
私は、まだ2割も空いていない小さな目をこすりながら、
ベッドから抜け出し、カーテンを開けた。
今日は4月1日。
世間ではエイプリルフールと呼ばれ、嘘をついてもいい日とされている。
しかし私にとってこの日は、「本当のことを言う日」。
私は普段、自分の感情を押し殺して生きている。
本当はつまらないのに、愛想笑いしてみたり。
本当は可愛くないのに、気を遣って褒めてみたり。
本当は今すぐ帰りたいのに、無理に場を盛り上げてみたり。
本当は殴りたいほどムカついているのに、強引な笑顔で対応してみたり……
私にとっては、365日が嘘なのだ。
いつも心と体があべこべで、イライラしてしまう。
思ったことをそのまま吐き出せばどれだけ楽になれるんだろう。
でもそれができない。
私はとても弱くて脆くて、汚い人間なのだ。
だからいつも偽りの平和主義であろうとする。
みんなにいい顔をしてしまう。
そんな自分の弱さと八方美人面に、ストレスが溜まる。
だから、今日4月1日だけは、
「嘘」を借りて「本音」をぶつける日にしている。
「冗談だから」「嘘だよ」と、会話の最後にちょこっと付け加えるだけで、
大抵のことは「エイプリルフール」が何とかしてくれる。
私にとっては、元旦よりもおめでたい日なのだ。
さぁ、364日分のストレスを吐き出しに行くとしますか。
私は普段よりも少し濃いめのメイクと派手な服装で会社へ向かった。
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