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厄災をこえて
「それで、焼きそば食べたら鏡に私が映るようになったし、お互いを元の世界に戻すこともできたって?」
「そうだよ」
「焼きそばすごすぎない?」
「そもそもサキがこっちのアメを食べたのがきっかけだと思うんだ。相手の世界の食べ物で、力にブーストがかかる気がする」
「なるほど?」
たしかに食べた。でも初めてじゃない。
マサを止めようと必死だったとか、そういうのも関係するんだろうか。
「あとさ、サキ言ってたじゃん『こんな世界なら戻らない方がいい』『逃げて正解』って。あの時まだギリ午前中だったから」
「……もしかして、エイプリルフールの嘘に換算されたってこと?」
「かもしれない」
「ええー? マサの力が単に強かっただけじゃない?」
「いや、今回のことで分かった。サキも割と力があるよ。最初の入れ替わりはサキの力だと思うし」
「信じられない」
自分に力があるなんて考えたこともなかった。
「そういえば今話せてるってことは、マサのお母さんを説得できたってこと?」
「ああ、『別世界に送ってやろうか』って脅したら、なんかいろいろ解決したよ」
「マサのお母さんに?」
「まあ、そんなとこ。こんなに簡単なら、もっと早く動けばよかった」
「これからがあるじゃん!」
「そうだね。とりあえず外に出たいし、受験もしたい」
「すごくいいと思う」
「あと、サキともっと話したい。もうエイプリルフールの縛りはなくなるから」
「私も! 楽しみだなぁ」
嘘をつく時間にしか言葉を交わせなかった私たちが、何の日とか関係なく鏡をとおして繋がれるようになったのはとてもめでたい。
嘘の日だったり、厄災の日だったり。
世界が違っても散々な一日に指定されてる四月一日。
だけど今日、今このときから、私たちにとっては奇跡で思い出の日になって、それがこれからも続いていくんだ。
マサの部屋に夕日がさし込んで、やわらかな光に満たされているのが見える日が来たみたいに。
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