特別な日

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「いまだにさ、母さんが出かけるのが一年でこの時間だけなんだよな」 「え、じゃあ今も学校行けてないの?」  マサは家にお母さんがずっといて行動を制限されてるとか、同じような白い服しか与えられていないとか、ちょっと首を傾げるような待遇を受けている。  常識はこっちの世界とさほど変わらないみたいだし、家計が常にカツカツな私の家よりよっぽど裕福そうなのにも関わらず、だ。  全部お母さんの指示らしいから、決めつけたくはないけど、毒親なのかなと考えてしまう。   「そう。一度も行かないまま義務教育終わったな。あ、サキは卒業おめでとう」 「ありがとう……って、一度も? 勉強は?」 「家庭教師が何人かいるから」 「そうなんだ……」 「話してなかったっけ?」  何でもないことのように微笑むマサに、私は呆然としながら頷いた。過去に二人でした会話を思い返してみるけど、マサの個人的な話はあまり聞いた覚えがない。マサも私に質問する方が多かったし、大半の時間は私が話して、マサがそれに相槌を返すのがいつもの過ごし方だった。 「……そっかぁ」  どんな反応すればいいのか分からなくて、気の抜けた返ししかできない。  別にマサが納得して受け入れた結果なら、私がどうこう言える立場じゃない。でも胸に広がるモヤモヤはどうにも誤魔化せそうになく、顔に出る前にうつむいた。
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