11.真っ暗な海の底の洞窟の奥

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11.真っ暗な海の底の洞窟の奥

 それからの春休みの日々は、なにをしていいのかさえもわからないままに過ぎた。積み重なっていくのはからっぽな日々だけ。そんな時間の中で、自分はなんて愚かなことをしたのだろうという思いと、碧人への怒りが募るばかりだった。  光さえ届かない海の底に広がる岩礁に開いた、魚や貝さえもいない暗い洞窟の奥で過ごしているような気分。どんな光さえも、そしてどんな音さえも届かない真っ暗な海の底の洞窟の奥で、体を縮こませてひっそりと生きているような気分。  そんな場所で壮真は何度も考え、思い出し続けた。  告白してダメだったらエイプリルフールだってことにできる。たわいのないウソだよって言えば、今までの友だち関係も続けられる。  あんなアドバイスをしたのは碧人にも関わらず、碧人はあんなアドバイスなんてしていないと平気でウソをついた。4月1日の夜に。  心がすっきりと晴れないままの日々が続いた。もうクラス替えなんてどうでもよかった。いっそのこと、みんなと離れ離れになった方がいいとさえ願った。  あのエイプリルフールから数日が過ぎた。碧人はもちろん、芽依にも琴音にも顔を合わせていない。壮真はあの三人の誰とも電話やメッセージのやり取りもないまま過ごすばかり。
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