01.夕方の街を見つめたまま

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01.夕方の街を見つめたまま

「そういや高三になるときにはクラス替えがあるよな?」  壮真の言葉に碧人がうなずく。当たり前だろと告げるように。 「じゃあ、オレたちもみんな別々のクラスになるかもしれないな」  紙パック入りのオレンジジュースを手にしたままの壮真に、碧人が短くこたえる。 「そうだな」  終わってしまった今日という一日を名残り惜しむみたいな碧人の言葉。夕焼けの色をした空が二人の影をアスファルトの道路に長く落とす。 「この春休みが終われば、僕たちもいよいよ高三だからな。今のうちに遊んでおかなきゃ。高二のうちにね」  碧人のそんな言葉で、今日は同じクラスの友だち四人で春休みの一日を過ごした。壮真と碧人、芽依と琴音の四人。  駅前のモールをウィンドウショッピングし、ゲームセンターで遊び、そしてカラオケといったコース。そんな一日も終わった。まだまだ遊び足りない気持ちを抑え、それぞれ帰り道についた。壮真と碧人は、芽依と琴音と別れたばかり。 「なあ、お前はさ、琴音のことどう思ってる?」  夕焼けの色に染まる街を見つめながら壮真が切り出す。今日一日、琴音と一緒に過ごしてひとつの覚悟を決めた壮真。碧人はカフェオレのペットボトルを手にこたえる。 「いい子だと思うよ。性格だって良いしさ」  壮真がまっすぐ見つめる夕方の街は慌ただしく夜を迎え入れようとしていた。ぽつぽつ灯りはじめる自販機や店先の明かり。 「オレさ、実は琴音のことが好きなんだよ」  壮真は思い切って切り出した。  そんな壮真の隣で、碧人は夕方の街を見つめたまま無言で歩き続ける。碧人の唐突な言葉にどう答えたらいいのか考えながら。 「ほら、オレたちは今はみんな同じクラスだけどさ、高三になったら別々のクラスになっちゃうかもしれないだろ?」
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