路上の約束

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俺は路上弾き語りをしている。 いわゆる街の中の空いているスペースに、楽器を持ち込んで 音楽パフォーマンスをする人たちのことだ。 上手ければ数人が足を止めてくれることもあるけど、大抵は 通り過ぎていくだけ。 割とメンタルを試される行為という気もする。 それこそ度胸試しでやる場合もあるし、ライヴの宣伝の為に やる場合もあるし、とにかく自身の活動を知って欲しくて やる場合もある。 ちなみに場所によっては特殊な許可証が必要だったりする。 で、俺は、ただギターを弾きたいだけ。 アマチュアのミュージシャンは東京都内には多い。 俺も社会人として働きながらもバンドをやっている。 観客が30人くらいで満員になるような、小さなライヴバーで 月に数回のステージをこなしている。 特にプロを目指すわけでもないが、集客が無ければ活動は続かない。 メンバーそれぞれが宣伝の努力と、スタジオでの練習を重ねて 日々を過ごしている。 そういった中で、ひとりで好きなようにギターを弾きたいときに 俺は路上ライヴをやる、それだけ。 誰も足を止めなくても気にしない。 足元に置いてあるギターケースに、通行人からの小銭が入らなくても 特に気にしない。 そんな平穏な路上ライフが、あるときを境に一変した。
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