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「お嬢様に何かあっては私が困ります。私はルルーナお嬢様をお助けいたします!」  何が困るのかわからないけど、シャロンの協力を得られることになり。次の日、彼女は「お嬢様、飲んでください」と、彼女家で扱うお茶の葉をたくさん持ってきた。 「黙っている代わりに、お嬢様に薬草茶の味チェックをしてもらいたいです」 「私が? 薬草茶の味チェック?」 「はい! ルルーナお嬢様は薬草茶にも詳しくて、お嬢様にいただいた意見の通り茶葉を改良しましたら、貴族に大ウケでうちの人気商品になりました!」  薬草茶――よい睡眠を取るためにリリ、カルサロ、レッスなどの葉でだした、薬草的な茶を飲む習慣が貴族達の間でできた。  舞踏会、夜会で夜更かしをせず、睡眠をじゅうぶんに取ることが美容につながると、ある研究者が発表したからでもある。  ――ほんとうの話は。  あの夢を見てから、ルルーナはあまり寝付けなくなっていた。毒草と解毒草を調べるうちに、薬草にも興味を持ち、よい睡眠が取るために飲むといい、薬草茶の存在を知った。 (はじめは調合が上手くいかず苦くて、味も悪く、飲めたものじゃなかったのだけど、効果があったから……味のよい薬草を試して作ったのが始まり)  全部、自分のために作ったのだ。 (そのお茶が、流行っているなんて知らなかったわ)   「店の繁盛は、ルルーナお嬢様のおかげなんです。お嬢様の好きな味の薬草茶を作りたいと、茶師がいでています」 「私の好きな味の薬草茶っていいわね。なら協力するわ」  毒もだけど、薬草も面白いのよね。    翌日。招待された地図の通り向かった、ルルーナは到着した場所を見上げて、驚くしかなかった。 (ここ、王城じゃない。届いた招待状には王家の封蝋が押されていない。もしかして、偽物なのかと思ったけど、本物だった……まさかあの人が、第二王子のカーサリカル殿下だなんて)  知らないのも当たり前。  毎年王城で開催される第二王子の誕生会は、主役の王子が病弱と言われていて、主役抜きの誕生会。公爵令嬢のルルーナも王家から招待状をもらい、何度かカサロと参加している。まぁカサロはエスコートの後、用事があると言ってルルーナから離れて、見えないところでリボンといたのだろう。  ――貴族の誰もが殿下の顔を知らない、謎に包まれている第二王子だ。まさか、図書で出会ったあの人がそうだなんて……思わない。  でも、図書の床に座った姿。  隣で不躾に笑う。  淑女らしかならぬ受け答え……まさか、不敬罪を告げられてルルーナは捕まる、そして牢屋で毒で死ぬ! (逃げ、帰ったほうがいいわ?)  隣にいるメイドのシャロンも、王城を見上げて驚いている。まだ門をくぐっただけで、王城の中に入っていない、いまなら帰ってもわからないのでは? すぐ屋敷へと帰り……殿下に向けて、体調が悪いと手紙を書けば。  隣のシャロンの手を握って「帰りましょう」と、合図したのだけど。シャロンは真っ直ぐ前を見て、顔を青くし、首を振った。  ――え? 「ルルーナ嬢、待っていたよ」  いつの間にか側まで来ていた、第二王子のカーサリカル殿下に抱きしめられた。
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