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3ー8 魔族
懊悩している俺にロタは、困惑していた。
どうすればいいのか。
ロタは、俺のために風呂を用意すると俺を風呂に入れた。
そして、風呂からあがった俺にホットミルクを差し出した。
「これを飲んで今日は、もう、休まれてください」
俺は、ロタの差し出したホットミルクを飲んで驚く。
酒が入っていた。
ロタは、酒が嫌いだ。
ロタの父親は、母親や子供たちに隠れて酒を飲んでいた。
飲んでは、暴れる父親。
しまいには、母親が父親を殺したという容疑までかけられたのだという。
それを神殿からかばい、俺の乳母としたのは、俺の母上だ。
ロタは、父親の顔を知らない。
だが、母親からきいたのだろう。
酒を異様に嫌うようになっていた。
なのに。
俺は、ロタの入れてくれたホットミルクをゆっくりと味わって飲んだ。
そして、その夜は、眠りについた。
翌朝。
いや、朝というには早い。
まだ日も開けきらぬ内のことだ。
俺は、奇妙な気配に気づいて目が覚めた。
目を開けるとそこには、一人の女が立っていた。
淡い金髪にすみれ色の瞳をした女。
だが。
女の下半身は、獣だった。
「静かに」
女は、俺が目覚めたことを知ると低い声で告げた。
「死にたくなければ声をあげるな」
女の言葉に俺は、頷いた。
こいつ。
俺は、黙ったままベッドの上に起き上がるとまじまじと女の全身を見た。
上半身は、美しい女。
まあ、ちょっと胸部の装甲が豊かすぎる感じはするが、それはそれで悪くはない。
しかし、女の下半身は、赤っぽい獣毛で覆われている。
大きなヤギのような下半身をしたその女は、俺に話した。
「お前に話がある。何、悪い話じゃない」
いや。
こういうシチュエーションで悪い話じゃないとかいわれるときは、必ず悪い話のことが多いんじゃね?
それでも俺は、黙って女の話をきくことにした。
女の名は、ローナ。
予想通りの魔族の者だった。
なんでもローナは、魔王の命で聖者を探していたんだとか。
「なんで、魔王が聖者を探している?」
俺が訊ねるとローナは、眉をよせて困った顔をした。
「これから話すことは、我々だけの秘密だぞ」
ローナの言葉に俺が頷くと、彼女は、静かに話し出した。
「実は、魔王様は、病気なのだ」
ローナは、とつとつと話した。
魔王が病に倒れたのは、数年前のことだった。
原因不明の病に魔族の幹部たちは、慌てていた。
なぜなら、数年後には、人間界を滅ぼすような大戦争を起こす予定だったからだ。
なんとか魔王の病を治さなくては。
そうして、魔族は、世界中を駆け巡り病の治療法を探した。
「その結果、聖者にしか魔王様の病は治せないということがわかったのだ」
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