1 転生ですか?

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 1ー10 未来の始まり  それからは、修羅場だった。  俺たちは、魔物の群れを狩り続けた。  木剣に比べて格段に重い真剣を握る腕が痛んでも俺は、戦うことをやめなかった。  俺は、背中をロタに任せていた。  ロタは、俺の従僕として騎士団長に鍛えられていてかなりの剣の使い手になっていた。  まあ、俺ほどじゃないがな。  俺は、呼吸を弾ませながら剣を振り続けた。  実戦は、いい。  鍛練と手応えが違う。  俺は、狂戦士のように戦い続けた。  そのとき。  一瞬。  握っていた剣が魔物の血で滑って俺は、剣を取り落としそうになった。  しまった!  「オルナム様!」  ロタの悲鳴が聞こえた。  肩が熱い。  巨大な狼の魔物が俺の肩に食らいついていた。  目の前が赤く染まっていく。  これは、俺の血?  俺は、だんだん体が冷えて固まっていくのを感じていた。  ずるっと竜馬から堕ちた俺にロタが駆け寄ってくるのが見えた。  ロタが泣いている。  俺は。  死ぬ、のか?  俺の意識が消えそうになったとき、機械的な声が聞こえた。  『リ・ボーン発動条件を確認』  そして。  時が巻き戻されていく。  流れ落ちた血が俺の体内に戻っていく。  食われた肉が戻る。  そして。  「オルナム様!もっと気を引き締めてください!」  ロタが俺に言い放つ。  俺は、はっと気づいた。  時が。  戻っている。  俺は、ぎゅっと口許を引き締めた。  「わかっている、ロタ」  俺は、また、死んだのか?  そう、思ったとき、誰かが叫んだ。  「魔物、だ!」  俺は、背筋がぞくぞくするのを感じていた。  「行くぞ!ロタ」  俺は、剣を抜くと駆け出した。     その日、俺は、3回、死んだ。  その度に、俺の時は戻り、俺は、戦い続けた。  死ぬ度に俺の持つ力は、強まっていく。  最後には、俺は、1人で魔物の群れに飛び込み無双していた。  すべてが終わり、倒れた魔物の死体の山の前に全身を朱に染めて立つ俺。  その姿を見て誰かが言った。  「紅の戦鬼、だ!」  それが、俺の今生での騎士人生の始まりだった。  戦場を駆ける紅の戦鬼。  辺境伯領の狂戦士。  人々は、俺を口々にそう呼び、恐れるようになる未来の始まりだ。  
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