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3ー3 炎と氷
だが、アウラ王女殿下は、試合を始めなかった。
相手が動かない以上、俺も動かなかった。
二人して見つめ合うこと数分。
やっとアウラ王女殿下が口を開いた。
「エルガーナ、この試合で私が勝ったらお前の初めてを私がいただく!」
はいぃっ?
俺は、ぎょっとしていた。
俺がアウラ王女殿下に負けることなんて考えられない。
だが。
俺は、答えた。
「いいですよ」
野次馬たちがわっと歓声をあげた。
俺は、付け加える。
「ただし、俺が勝ったらもう俺を口説こうとするの、やめてください」
「いいだろう」
アウラ王女殿下の周囲にいくつもの魔方陣が展開されていく。
王女殿下は、魔法に意識を集中させて呪文を唱えている。
やるなら今だ!
俺は、突然、氷の刃でアウラ王女殿下を急襲した。
無防備なアウラ王女殿下は、いきなり氷の矢に襲いかかられ防ぎようもなく立ち尽くしていた。
全身に突き刺さった氷の刃がしゅうしゅうと音をたてて解けて蒸気があがる。
王女殿下がにやり、と唇を歪める。
「無詠唱とは、やってくれる」
俺は、身構えた。
王女殿下の周囲の魔方陣は、まだ生きている。
王女殿下がびゅっと手をつき出す。
「燃え尽きろ!烈火爆華弾!」
炎のつぶてが俺に襲いかかる。
アウラ王女殿下が笑い声をあげる。
「醜い火傷をおっても私の気持ちは変わらないから安心しろ!オルナム!」
かっと燃え上がる炎に俺は、包まれる。
がすぐに俺は、王女殿下の繰り出した炎を手懐けると、炎をまとめ、自分の頭上に巨大な炎の球を作り上げた。
「な、に?」
驚愕しているアウラ王女殿下に俺は、彼女の魔法を投げ返した。
ごうぅっとアウラ王女殿下の体が燃え上がる。
「ぐあぁっ!」
王女殿下が叫ぶのを聞いて、ミラン先生が慌てて近づく。
「勝負、あり!」
ミラン先生が魔法の炎を消そうとして巨大な水球を作り出し炎に包まれている王女殿下に向けてぶつける。
炎の魔法が水の魔法で中和される。
膝をついて崩れ落ちるアウラ王女殿下に救護班が駆け寄る。
俺は、すっと手をあげると、呟いた。
「ヒール」
一瞬でアウラ王女殿下の全身の火傷が跡形もなく消えた。
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