3 魔法学園の花ですか?(2)

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 3ー7 聖者ですか?  俺は、体調不良を理由にそうそうにバルトレット王女殿下のもとを辞して寮へと戻った。  ロタは、俺のことを心配して同行しようとしたが午後からも授業があることを理由に俺は、一人で戻ると告げた。  寮に戻った俺は、ベッドに突っ伏していた。  どうする?  どうすればいい?  バルトレット王女殿下の話では、俺が治癒魔法を行使するのを見た教師たちが俺のことを聖者ではないか、と騒ぎだしているのだとか。  聖者というのは、数百年に一度現れるという特別な存在だ。  神殿は、俺の話をきいて色めき立っているのだとか。  ぜひ、俺を神殿に向かえたいとか言っているらしい。  もし、聖者として神殿に連行されたりしたら。  もう、二度と学園には戻ってくることができないだろう。  俺は、クラスの連中の顔を思い浮かべた。  ロタに、他の生徒たち。  宰相の娘であるルイーズは、ちょっといけすかないが、最近では、あまり絡まれることもなくなってきている。  そして、アウラ王女殿下。  いやいや。   彼女には、会えなくなっても平気だろう?  俺の初めてのキスをあんな風に奪った女。  まっすぐな魔法を使う女。  『これからは、手を出すことにした』  そう言った。  俺のことをからかっているんだとばかり思っていたのに。  真剣な眼差しで言ったんだ。  『覚悟しておけ、オルナム』  俺は、なぜか胸が騒ぐのを感じた。  いやいやいや!  俺は、ぶんぶんと頭を振った。  今は、そんなこと考えている場合じゃない!  神殿が俺を聖者だとか言っているとしたら。  前回の生で現れた聖者は、どうなっているんだ?  宰相が連れてきたあの男。  聖者と名乗ったあの男は?  俺は、嫌な予感にさいなまれていた。  どちらに転んでも俺にとって嫌なことにしかなりそうにない。  だいたい、俺がなんで聖者?  ただ、ちょっとヒールが使えるっていうだけなのに。  俺は、うめいた。  なんとかしなくては。  聖者なんていうと聞こえはいいが、ようは、優秀な神官を産むための種馬にすぎない。  神殿の奥に一生、閉じ込められて子作りさせられるかも。  もしくは。  この国の王族に神に選ばれた者の血が混ざるようにといって無理矢理王女殿下たちの婿にされるかも。  そんなのは、嫌だ!  俺は、自由でいたい。  もう、閉じ込められるのも、女に蹂躙されるのも嫌だ!  
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