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1ー3 決意
俺は、はっと気づいた。
久しぶりに見るロタは、なんだか少し幼い。
気のせいというよりは、5年ぐらい前のロタといった感じだ。
それに、俺も。
俺は、自分の両手をじっと見つめた。
少し、小さい。
俺は、縮んでいた。
いや。
少し、幼くなっている。
時が戻ったのか?
俺は、両手をぐっと握りしめた。
あの女。
俺が処刑されるときに聞いた女の声が言っていた。
『君にチャンスをやろう』
それは、人生をやり直すチャンスだろうか?
それとも。
俺を裏切り陥れた連中に復讐するためのチャンス?
俺には、そんなことはどうでもよかった。
まだ、間に合う。
今なら。
まだ、家族を救うことができる。
俺は、きっと空を見上げた。
例え、敵が神であろうとも。
俺は、決意していた。
今度こそ、家族を守ってみせる!
俺は、ベッドから飛び起きるとロタに命じた。
「ハサミを」
「はい?」
ロタは、俺を妙なものを見るような目で見ていたがやがて諦めたように踵を返して部屋を出ていった。
しばらくしてロタは、大きな銀色のハサミを持って戻ってくるとそれを俺に差し出した。
俺は、ハサミを受けとるとそれを自分の首もとへとあてがった。
「な、何を!」
ロタが止めようとしたがもう、遅い。
俺は、自分の長い髪を切り落とした。
母上に似た青みがかった銀髪がはらはらと空を舞った。
それは、国で一番美しいと言われていた。
将来の王配にふさわしい。
そう言われた男は、もう、どこにもいない。
ここにいるのは、ただの騎士。
家と家族を守るために戦う騎士にすぎない。
見ていろ、ラーナ・クルシーア。
そして、聖者。
王族たちも。
みんな、まとめて片付けてやる!
闘志を漲らせる俺をロタが涙目で見ている。
「なんてことを・・気でも狂ったんですか?オルナム様」
「そうかもしれないな」
俺は、ロタににやりと笑いかけた。
「俺は、騎士になるぞ、ロタ」
「なんですって?」
ロタが心底たまげた様子で俺をまじましと見た。
「男が騎士になんてなれるわけがないでしょう!何、寝ぼけたこといってるんですか?オルナム様!」
ロタの悲鳴の様な叫びをよそに、俺は、口許を歪めた。
待っていろ。
俺は、必ずやりとげてみせる。
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