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王子……? 「嘘をつくと不敬で罪になりますよ。」 「じゃ、付いてきたらいいよ。今日、父上と会うんでしょ?それ、俺も同席するし。」 本物だわ……。 国王陛下の予定を知ってる人間なんて、この国で数えるほどしかいないもの。 「逃げてもいいけど、すぐ見つかるよ。」 馬車に紋章がないのはお忍びだから。けど、この余裕。護衛が1人もいないなんて事はありえないよね。 逃げられるわけがない。 「散歩は終了したので、帰ります。」 綺麗な金髪碧眼王子はめちゃくちゃ目立ってるし、早く立ち去ろう。 「送って行こうか?」 「結構です。」 「君の意思を尊重するよ。じゃ、気を付けてね。」 尊重するなら逃げさせてくれたらいいのに。 駆け落ちされただけでも不運なのに、ここで王子に見つかるなんて、私は天から見放されたんだわ。 仕方なく邸に向かって歩いていると、グイっと腕を引っ張られた。 「クレアっ!!」 「リアム様、何故ここへ?」 「ハァハァ…良かった…」 そう言って、息を切らしたリアムに抱き締められた。 「あの……離してください。」 いくら義弟でも、こんな事をされるのは困る!! 「申し訳ありません。貴方に何かあったのではないかと不安で…」 「私は散歩をしていただけですから、心配する事など何もありません。」 ここは散歩で誤魔化さないと!!逃げ出そうとしていたなんて気付かれたら、見張りを付けられるもの。 「クレア、このウィッグはどこで手に入れたのですか?」 ウィッグ? もしかして変装してると思ってるのかしら。 「これは地毛です。」 「……まさか、髪を切ったのですか?」 「はい、気分転換に。」 逃走資金調達のために…とは言えない。 「どこで切ったのですか?」 「何故ですか?」 「回収します。」 「え?」 「回収して、それでウィッグを作ります。」 「結構です!」 わざわざ私の髪で作る必要はないでしょ。 まぁ、リアムが必死になる理由は解るけどね。 「この髪型だと『伯爵家の恥』になるから焦ってるのでしょう?」 「そうです。」 男の子みたいな貴婦人なんて、笑い者でしかないから、当然だけどね。 「でも、個人的には好みです。」 「そうですか。」 そういうご機嫌とりは要らないのよ。
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