106人が本棚に入れています
本棚に追加
「2人とも、座りなさい」
「はい」
「失礼致します」
陛下に促されて、私とリアムはソファーに座った。
「今日は爵位の事で話をしたくてね」
「はい」
「ハンストン家は王家と深く繋がりがあるのは夫人も知ってるね」
「はい」
「伯爵が体調不良で長期間療養が必要なのであれば、正式に代理を立てなければ仕事が進まない。解るかい?」
「はい」
もしかして、伯爵位をリアムに譲れって事になるのかも。この流れならありえるよね!
「ハンストン伯爵の代理をクレア・ハンストン、君に任命する。補佐はリアムだ」
え……?
「……わたくしが代理ですか?」
「そうだ」
「ハンストンの血を引くのはリアム様ですから、わたくしよりも適任なのでは……」
どう考えてもリアムでしょ。ハリーと結婚したといっても、私の出自は変わらないのよ。今まで何もしてこなかった、没落寸前の子爵家の女に何が出来るの。
それに、領土も領民も何もかも、全てを捨てて駆け落ちした色ボケ男の為に働くなんて冗談じゃないわ!!――どうにかしないと。
「夫は重病で、私達は子を授かる見込みは薄いと言われています。夫の容態が今以上に悪化する可能性を考えると、リアム様に爵位を継いで頂いた方がこの国の未来の為だと思います」
「二人が子を授からなかった場合、リアムの子に権利はうつるね」
「夫は回復に時間を要すると思います。妻として出来るだけ夫の側にいたいのです。ですから、リアム様にお仕事を引き継いで頂けると助かります」
私と陛下の話を聞いていたライリー王子が、笑顔で会話に入ってきた。
「陛下、提案があります」
「何だ?」
「マロンちゃんが伯爵の代理をする期限を決める…というのはどうでしょう?」
「いつまでだ?」
「リアムが結婚するまでです。マロンちゃんはどう思う?」
「妙案だと思います」
「だよね」
リアムの年齢なら、すぐに結婚したっておかしくないわ。プロポーズして断れる家も殆どない。性格の悪い王子も役に立つじゃない!!
「殿下、その案はお断り致します」
国王様以外はすんなり納得してくれる内容だと思ったのに、リアムが断ってしまった。
何で納得しないの……この人。
まさか、爵位を継ぐのが嫌なの?
最初のコメントを投稿しよう!