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腹は立つけど、今は我慢。我慢よ。
私の幸せな未来のために。
『伯爵が領民を捨てて駆け落ちした』だなんて、すごい醜聞よね。この切り札は、有効に使わないと。
それにしても、視察ってどこに行くのかしら。馬車ではリアムも従者も喋らないし、何時間も馬車に揺られるだけっていうのも辛いのよね。
「リアム様、視察先で私は何をすればいいのですか?」
「貴女は何もしなくて結構です」
「でも、伯爵の代理でいくのですよね?」
何も知らない状態でいいの?
「視察先では、常に私の横で笑っていてください。それ以上は貴女に期待していません」
「はい。では、全てお任せ致します」
仕事をしなくていいなら助かるけど、言い方ってあると思うのよね。伯爵家は兄弟揃って私を馬鹿にしたいの?
ううん、既に馬鹿にされてるのよ。けど、構わないわ。最後に笑うのが私ならね。
落ちぶれた子爵令嬢なら、何をされても文句は言えないと思ったんだろうけど、詰めが甘いのよ。
私は、父とメイドとの間に産まれた子。父親が邸で浮気して産まれた、望まれない子だった。
家では虐められたりはしなかったけど、空気のように扱われてた。
私を産んだ後、母は邸を追い出されて死んだ。私を守ってくれる人なんていない。私が守りたい人もいない。
大切なものを持たない人間は強いのだと、思い知ればいいのよ。
リアムは共犯か被害者なのかは知らないけど、伯爵家がどうなろうが私には関係ないわ。
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