伯爵家の恥

2/4
前へ
/57ページ
次へ
 腹は立つけど、今は我慢。我慢よ。  私の幸せな未来のために。 『伯爵が領民を捨てて駆け落ちした』だなんて、すごい醜聞よね。この切り札は、有効に使わないと。  それにしても、視察ってどこに行くのかしら。馬車ではリアムも従者も喋らないし、何時間も馬車に揺られるだけっていうのも辛いのよね。 「リアム様、視察先で私は何をすればいいのですか?」 「貴女は何もしなくて結構です」 「でも、伯爵の代理でいくのですよね?」  何も知らない状態でいいの? 「視察先では、常に私の横で笑っていてください。それ以上は貴女に期待していません」 「はい。では、全てお任せ致します」  仕事をしなくていいなら助かるけど、言い方ってあると思うのよね。伯爵家は兄弟揃って私を馬鹿にしたいの?  ううん、既に馬鹿にされてるのよ。けど、構わないわ。最後に笑うのが私ならね。  落ちぶれた子爵令嬢なら、何をされても文句は言えないと思ったんだろうけど、詰めが甘いのよ。  私は、父とメイドとの間に産まれた子。父親が邸で浮気して産まれた、望まれない子だった。  家では虐められたりはしなかったけど、空気のように扱われてた。  私を産んだ後、母は邸を追い出されて死んだ。私を守ってくれる人なんていない。私が守りたい人もいない。  大切なものを持たない人間(わたし)は強いのだと、思い知ればいいのよ。  リアムは共犯か被害者なのかは知らないけど、伯爵家がどうなろうが私には関係ないわ。
/57ページ

最初のコメントを投稿しよう!

101人が本棚に入れています
本棚に追加