伯爵家の恥

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 悔しそうな顔をして、侍女は服を選んで渡してきた。  ハンストン伯爵家が大切なら、最初からこうすればいいのに。私みたいな田舎者を相手にしたくないという気持ちは解るけど、プライドの方向性を間違えてると思う。  侍女が代金を払っている時に気がついた。  今、私の事を見てる人っていないよね。逃げ出せるかも。ブローチだけは着けているし、これを売れば暫くは暮らしていける。  そっとお店のドアを開けるけど、店員も誰も気付いてない。いける! 「キョロキョロして、何をしているんですか?」  店を出るとリアムがドアの横に立っていた。 「……何故ここに?」  まさか、逃げ出すと予想してた? 「貴女を待っていたんです。一緒に食事をしようと思って」 「そうですか」  よかった。逃亡に気付かれなくて。 「その服……」 「これも駄目ですか?では、着替えてきます」 「いえ、似合っています」 「ありがとうございます」  夫に駆け落ちされた惨めな女だと思ってるくせに、よくもそんな嘘を……。  その後、一緒に食事をとったけど会話は何もないし、何よりリアムは一切笑わない。  黒髪で青い瞳、目鼻立ちがハッキリしていて、背も高い。容姿は素敵だけど、何を考えてるのか掴めない…かなり苦手なタイプ。  多分この人は、結婚に反対だったと思う。 私とハリーの結婚話が進んでも、1度挨拶しただけ。それから昨日の結婚式まで顔を合わせる事もなかった。  ハリーは優しくて人当たりはよかったけど、全てを捨てて女と逃げるような男だし、伯爵家の繁栄もこれまでかもね。  この家って侯爵位がつくられる前からあるんだから、王室と相当関係も深いよね。いつまでも当主不在で通せると思っているのかしら。  面倒な事に巻き込まれる前に、逃げ出さないと。
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