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1. 新たな生命
あの地球滅亡の危機を私『空野姫和』と俺『瀬戸内神龍』の2人で食い止めた。
その後、目を覚ました俺は無事に姫和と高校を卒業しそれぞれの夢に向かって歩み始めていた。
姫和は、児童福祉司になって困っていたり悩んでいる子の力になりたいらしい。そして、その長年の夢をようやく叶える事ができ、充実した生活を送っているみたいだった。
俺は、医者になって救ってくれた人への恩返しをしていきたいと思って医学の勉強を沢山した。そして、五年ほど前にようやく合格することが出来たのだ。
夢を叶えた俺達は、安定期に入った。そのチャンスを狙っていたから、とても嬉しい。
「いきなりなんだけど、今日会える?」
メッセージにその1件を送った。すると、
「真琴君、今日会えるよ!とっても楽しみ〜!」
と、返信が返ってきた。
俺はその後、ドキドキした気持ちを押さえ込みながら赤い薔薇のブーケを手に抱え、彼女にピッタリの指輪を買いにアクセサリーショップへ向かった。
「いらっしゃいませ〜。」
「こんばんは、あの…このサイズに合う指輪を見せて貰えませんか?」
「かしこまりました。ちなみに、ご婚約指輪をお求めでしょうか?」
「はい、そうです。」
「承知しました、少々お待ちください。」
そう言って、店員さんは3つのキラキラと輝く宝石の埋め込まれた指輪を机に運んでくれた。
「お待たせいたしました、こちらがそのサイズとなっています。」
どれも、一つ一つに工夫が凝らされている。この中から選ぶなんて…。
しばらくの間悩んでいると、
「あの、お客様。お悩みの途中、申し訳ないのですが...。もしよろしければ、お相手の方の特徴や性格などをお教え頂けませんか?
そうすれば、ピッタリの物をご紹介できると思います。」
「確かに、そうですね!」
「はい!」
「彼女は、いつも笑顔で俺の気持ちを見透かすようなとても綺麗な瞳で、ふわふわした暖かい雰囲気を持っています。そして、いつも無理ばかりしてしまう所が心配で…。だから、そんな彼女を見守ってくれるような指輪を選びたいんです。」
「なるほど、とても愛おしい方ですね。それなら、こちらはいかがでしょうか?」
「これはどんな宝石ですか?」
「この指輪に使われている鉱石は『クリソベリルキャッツアイ』という物で、石言葉には守護・慈愛・寛大な心・未来を見通すと言った意味が込められています。」
「クリソベリルキャッツアイ...これなら彼女を守ってくれるかもしれないですね。俺、これにしようと思います。」
「かしこまりました、ではお会計に移させていただきます。62000円となります。」
「カードで一括払いをお願いします。」
「かしこまりました、カードをお預かります。」
俺は、支払いを済ませ箱に入った指輪を受け取る。
「お手数、おかけしました。」
「いえ、お相手の方とお幸せに!」
優しく微笑んでくれた。
「はい、ありがとうございました!」
お辞儀をしてお店を出た俺は、スマホを取り出した。
ピコン
ちょうど、ポケットから着信音が鳴った。
「神龍君、今どこに居るー?」
「あ、今から花ヶ崎海浜公園の絶景が見える場所があるあの場所に向かってもらっていい?」
「分かった、また後でね。」
そして、再びスマホをしまい俺は足早に待ち合わせ場所へと向かう。
(こんな俺なんかと結婚してくれるだろうか...。)
弱気になる俺の心に嫌気が差しながらも少しの期待を持って、ようやく待ち合わせ場所へ着いた。
1度立ち止まり、深呼吸をして心を落ち着かせる。
「よしっ!」
背中に花束を隠し、
「姫和、お待たせ。」
「お久しぶり、神龍君!」
互いに会えたのが久しぶりで、愛おしい。
「うん、久しぶり!」
「それで、神龍君今日はどうしたの?」
「姫和、俺達恋人になって5年くらい経ったと思うんだ。まず、その5年記念祝いで花束を受け取って欲しい。」
彼女は、嬉しそうに受け取ってくれた。
「わあ〜、いい香り!」
朗らかに笑う姿に、胸がドキッとする。
「それで、そろそろ新しい関係を築きたいと思っているんだ。つまり、これからの人生ずっと一緒に歩んでいきたいんだ。だからっ!俺と結婚してください⋯!」
姫和に少し近づき、黒い箱を開けて指輪を差し出す。それと重なって、ライトアップされていた木々の電球がバチッと音を立てて全て消えた。
と、思うと左側にあるスポットから絶景が顔をのぞかせていたのだ。
まるで、サードニックスやイエローラビットなどの沢山ある鉱石が光り輝いているようだったのだ。
まるで、クリソベリル・キャッツアイが味方をしてくれているように。
ずーっと、伝えたかったこの言葉を指輪と共に届けたい。
それが、俺の1番の願いだった。
(でも、姫和は、どう答えるのか。もしかしたら、重いって思われるかもしれないな...。)
緊張気味に、姫和の顔を見ると⋯泣いて、いる
「えっ、姫和。どーしたの?」
「う、嬉しくて⋯。神龍君、ありがとう。
不束者ですが、どうかよろしくお願いします!」
「良かったー。ありがとう姫和、一生大切にするから!」
「うんっ!」
そして、指輪を姫和の薬指にはめた。
その時、程よいタイミングで夜空に花火が打ち上がった。
「綺麗だね、神龍君。」
彼女は、花火を見ながらそう言った。
「ああ、綺麗だ。」
俺は、姫和の美しさと今にも空で踊り出しそうな花火に心を奪われていた。
「⋯姫和。」
そして、手をにぎりしめる。
「神龍君。」
互いに見つめ合う2人、沢山の想いを胸に抱き締めあった。
その温もりに、目頭が熱くなる。
「絶対、君を守るから⋯。」
「ありがとう。」
心地よい雰囲気の中、2人の唇がそっと重なった。
˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩
その二ヶ月後、結婚式を挙げた。
その時久しぶりに琥珀や葵、琉斗、勇心などの友達と会うことが出来た。
琥珀は勇心と葵は琉斗と付き合うことが出来たそうだ。
皆、幸せそうで安心した。
その後も、新居に移ったり仕事をしたりと互いに忙しい日々を送っていたある日、ふと休憩中に通知センターを見た俺は口元が緩む。
(あっ、姫和からだ⋯。いきなり、どーしたんだろうか?)
個人メールを開いて見ると、
「神龍君、忙しいのに突然ごめんね。重要なお話があってメールをしたの⋯。」
俺は、慌ててメッセージを返信した。
「姫和、どうしたんだ重要な話って?」
(最近、忙しくて姫和との触れ合う時間があまり無かった。もし、別れ話だったらどうしよう⋯。)
不安が募る一方だった。そんな時、目を疑うような文が送られてきた。
「あのね、私達の間に双子の赤ちゃんができたみたいなの⋯!」
う、うそ!
こんなの、不意打ちすぎる⋯。
「や、やったな。姫和〜!ついに、俺達が親になる時が来たんだ。」
「神龍君、私もめっちゃ舞い上がってるよ!
でも、これから先この子達を私たちの手で守らないとだね!」
「そうだな!一緒に頑張ろう!」
「うんっ!」
そして、姫和は臨月を迎えて俺たちの間に2人の子供が産まれたんだ。
性別は、男の子と女の子だった。2人とも初々しくてなんて愛おしいんだ。
「ま、こと君。赤ちゃん達、可愛いね。」
産むのに体力を使い切った姫和は、力が入らないらしく疲れている。
「あぁ、そうだね。姫和、よく頑張った!産んでくれて本当にありがとう。」
「うん、4人でもっと幸せになろうね⋯!」
お互いに微笑みあって、姫和は眠った。その顔はとても嬉しそうな笑顔だった。
˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩
姫和と2人の赤ちゃんを連れて退院した俺達は、家に帰り名前を付けた。
男の子の方が、『紫苑』。女の子の方は、『遥花』に決まった。
そして、婚姻届や出生届などを提出しに行ったりしてやっと落ち着いた。
家に帰ると、賑やかでなんだか心が暖かくなるようだった。
そして、改めてこう思ったんだ。
ー紫苑と遥花を精一杯大切に育てていきたいと。
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