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2. 引き継がれる物語
私たちが生まれてからもう15年の月日が流れていた。
私は、遥花。お父さんとお母さんの力を受け継ぎ新たな能力を手に入れた1人。
その能力は、
穏術、又の名を『春陽炎《はるかげろう》』
と言うものだ。
『新緑薫風』や『春三日月』などの春の季節の生物から借りる力やお父さんと自身の力の混合技『春水』を使えるの。
今は、まだコントロールの練習中。
その一方、兄は凄い。
俺、紫苑も父さんと母さんの力を受け継ぎ遥花と同様に、新能力もある。
その能力は、
寒術、別名『冬霙《ふゆみぞれ》』
と言うものだ。
『樹氷』、『しまり雪』などの個人技と母さんの力と混合した技『冬恋雪』や冬の生物の力を借りて使う事が出来る。
俺は、取得済みの為もっと技を極めたり、新たな力について考えている。
これは、双子の私・俺達のストーリー。
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私・俺達が通っているのは、花ヶ崎町にある桜華高校。
今日から、高校2年で修学旅行前だ。
俺達は、必ずクラスは別になる。遥花は華奢なタイプだから上手くやって行けるだろう。
しかし、俺は極度のモブを演じている。
黒縁メガネにロングヘアをだらんと下ろして顔を見えにくくして学校生活を送っていた。
だからこそ、他人に鑑賞されにくいと言う得も少なからずある。
なぜそこまでするのかって?
それは波風立てず、ただひたすらに俺らをいずれ襲ってくる奴らを見つけ出すためなんだ。
どうやら、運が味方に着いてくれたのか、ちょうど俺らの学年に多数潜んでいるらしい。
そいつらを必ず見つけ出し、ボコボコにねじ伏せてやる。それが、真の目的だ。
ここまで、思う理由には深い訳がある。
父である神龍は、大雨が降ったある日に遥花と俺を連れてコンビニへ母の風邪薬やお粥の材料など
を買いに向かっていた。
中に入り、目的の物をカゴへと入れ欲しかったお菓子も買ってくれた。
早く食べたいと気持ちが昂っていた。
会計を終え、外へ出た時黒い服を身にまとった小さな2人組は後ろにいる大きな男の人に指示を出されこちらへ勢いよく走ってきた。
その時、父は俺達を後ろへ軽く押し飛ばして2人と戦っていた。
俺は、怖かった。でも、父が負けるなんて思ってもいなかった。
刀を持った2人組は、バランスを崩した父の心臓を刺した。そして、もう1人は俺と遥花の元へ刃を向け襲いかかろうとした。
恐怖のあまり、声が出ず立ち尽くしていた時だった。出血が酷くて立てるはずもない父が俺達を庇って背中にもう一撃を受けたのだ。
「うわぁぁぁ」
という、痛みを抑えきれなくなった父が叫んでいたのを覚えている。
バタンっと倒れた時、タイミングよく人通りが多くなった。その流れに乗るように3人の襲撃者は消えていった。
父さんは、その後水神様を呼び出して家まで運んでもらった。その時に告げられた言葉が一つ。
「もう、手の施しようがない。」
だった。
幼かった俺達にはまだその意味を理解出来てはいなかったがひたすらに泣いたのを覚えている。
母も何かを察したのか、フラフラしながらも走って来た。
俺達の前で弱った顔なんて出来ないと、涙を必死にこらえていた。
救急車を呼び、病院へ搬送された父は母に
「2人を頼んだよ⋯。」
と、言い残しこの世を去った。
この事を遥花も後から母さんに聞かされ、知っているようだ。でも、あえて口にしないでいてくれている。
そして、俺がモブを演じているのを知っている人がもう二人いる。
それは、瀬戸双子兄妹だ。
1人は、瀬戸陽都《あきと》。
スポーツが好きで、俺のモブっぷりを見ていつも帰りに笑っている。
初めは、ちょっとムカッと来ていたが今では何故かそれが無くなり、逆に一緒に笑うようになってしまったんだ。
それくらい、仲がいい。
そして、その陽都の妹が瀬戸夏海。
明るくて、天真爛漫な性格に俺は少しばかり惹かれていた。
夏海とは、幼馴染の皆で遊んだ時に少し話した程度だったが、クラスは何故か一緒になる事が多かった。でも会話する事はそんなになかった。
だが、俺の所属する展望部に彼女も入ってきてからはクラスが違えど仲良くなった。
(まぁ、少しは嬉しくない事もないのかもなっ。)
皆、俺の変装しているのを知っているけど、力の事について家族以外には他言無用の為、母さんと遥花、俺で秘密にしている。
決して、情報が漏れないように⋯。
これからの学校生活、同じクラスの陽都と話すにもメールしかない。彼は、クラスの人気者だからこんな陰キャと話していたら皆からどんな目で見られるか⋯。だから、密かに繋がりを持つ事を頑張らなくては。
もし、正反対の役をしてて陽都と絡んでいるのがバレたら俺も学校で居ずらくなるだろう。
つまり、ゲームオーバーって訳だ。
特に、俺達一族の敵である3人にとっても好都合になってしまう事。
チャンスは、残り1年。この機会を逃してしまうともう見つけ出すことは難しいだろう。
見つけ出すその日まで、家族を守るために日々山奥で修行を重ねている。
そこ、花ヶ崎森林公園で必ず1回は叫んで気合いを入れている言葉がある。
それは、
「Effort doesn't betray.《努力は裏切らない》」
ーその言葉を胸に、日々奮闘していく⋯。
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