4. 修学旅行

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4. 修学旅行

あれから更に2週間が経ち、今日は修学旅行当日。 俺は、すっごく重い荷物を抱えて学校の体育館へと向かった。 (あー、もっ。髪の毛、邪魔なんだけど!) 鬱陶しい髪を今だけかきあげピン留めした。 (やっぱ涼しいわ。) 空を見上げると、太陽の光がガンガン照っている。 風と丁度いい割合で俺を心地良くさせてくれる。 少し、黄昏ながらも学校に近づいてきた。 めんどくさいが髪の毛を下ろす。 そして、体育館に入り腰を下ろした。 室内は、蒸し蒸ししている。俺は、冬の能力を使う身として暑いのは弱みだ。 だが、それを克服するために何をすればいいのかをひたすら考えた結果。導き出した答えは、春夏秋冬の力を使えるようになる事だ。 たとえ、それが無理でも四季とは違う技を生み出す。それが、俺の目標になった。 弱みは、戦いの上で不利だからな。 色々と考えていると、まず、夏海が来た。 「おはよー、紫苑。」 今は、俺たち以外誰も居ないから沢山話せる。 そっ、それが嬉しい気もしなくもない...。 「おはよ、あいつらおせーよな。」 「そぉ?紫苑がただ早いだけだと思うんだけどー。もしかして、楽しみにしてたの〜!?」 「そ、そんなことねーし!」 「まぁまぁ、そんなに強がらなくてもいいんだよぉー笑。」 「あんまし、俺をからかうな〜!」 思わず、顔が熱くなる。 「はい、はーい。」 そして、腰を下ろししばらく2人で過ごした。 俺の話に乗って聞いてくれたり、笑ったりとリアクションが変わる所がまぁ可愛く見えてしまった。 話を終え、タイミング良く、遅く起きた遥花と陽都が俺らの元へやってきた。 「おー、紫苑と夏海はやいな。もしかして、お邪魔だったかな〜?」 冷やかしてくる陽都に、キリッと睨みつける。 「そんなわけねーだろ。いい加減にしろよ...。」 俺は、地味にキレかかり声のトーンをあえて低くした。 それに気づいた、陽都は少し引きつった顔になり、 「まぁまぁ、そんなに怒るなって〜。冗談だよー許してくれー!」 お願いっ!と女子みたいな行動をして俺に擦り寄ってくる。 「もー、いいから。座れよ!」 「分かった分かった。」 その後、同じ学年の生徒が続々とやって来た。 俺は、気を取り直して本を読み出した。 周りの皆は、俺を見ると「相変わらずだなー」という感じを醸し出している。 (俺としては、そっちの方が助かってるんだよな) ほぼ全員が揃った頃。 担任が前に立ちお辞儀をした。それに答えるように礼を返す。 「それではー、今からバスに乗ってFRP(フラワー・ロード・パーク)へ向かいます。今日も楽しんで行きましょう! では、立ってバスに乗り込んでください。」 「はい。」 返事をしてバスに乗る。いつ敵が襲って来るか分からないから用心しなくては。 「あっ、紫苑君!隣、よろしくね!」 (確か、水神龍だったはず。) 「あ、うん。水神君だよね、よろしく!」 と、言った。正直、こんなに素直な奴にこんな嘘の姿を見せるのは申し訳がないけど、仕方がないんだ。 席につき、バスが出発し始めた頃。龍が、俺に意味深な事を話してきた。 「コホン、ねぇねぇ、紫苑君は瀬戸内神龍と空野姫和との子供だよね?」 「う、うん。」 「とりあえず、その仮面被りは辞めるのだ。」 (いきなり、キャラが変わったのか? いや、父さんと母さんの名前を知ってるのは⋯?) 「なぜ、その名前を?もしかして、お前が⋯敵なのか?」 「お前、とは失礼なヤツめ。我は、瀬戸内神龍の能力の1つ水神だ。」 「は⋯?そんな事あるのか?」 (水神様ってのは、俺と遥花を助けてくれたあの方⋯。) 「有り得るのだ。紫苑よ、敵はすぐ側におるから用心せよ。誰にでも警戒を怠る事がない様にするのだよ。」 「身近に、いるのですね...。分かりました用心しておきます。それで、1つ質問なんですけど、水神様は生まれ変わったのでしょうか?」 「いや、ちょっとだけ違う...。 半分の力をこの体に注ぎ人格交代によってわしは出てこれるのだ。時間は、短いがな⋯。 そして、残りの半分は神龍がいざと言う時のために住処に封印されている。」 「なるほど。とりあえず、用心はしておきます。」 「それでよし、ではさらばだ。」 パタッと、体が倒れた。 「あ、あの。龍?」 「は、はい。どーしたんですか?」 「いや、今日楽しもう…。」 「うん!」 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ そして、目的地に着いた俺たちはバスを降りた。 青空に浮かぶオレンジの太陽は、俺をとかそうとしているみたいだ。 貴重品を入れたバックをかけ直しながらガイドの話を一通り聞いた。 そして、 「ガイドさんの話は以上です。これから、お花を存分に眺めてきてくださいね!では、行ってらっしゃいー!」 先生の話が終わった。 「遥花、夏海、陽都。揃ったみたいだね?」 一応、この幼馴染にも警戒の目を向けとかないと行けない。 「そーだね、じゃ、行こう!」 夏海が張り切った声で、言った。 「「「うん!」」」 入口でチケットを渡して中に入ると、まるでここが天国のようなんじゃないかと思わせるような世界が広がっていた。 そして、春夏秋冬の花が場所ごとに咲いているのが驚きだった。 (もしかしたら、この場所に力のヒントが隠されているんじゃないか?) と、思い俺は少しの間、別行動を取った。 まずは、『Spring road』を見て回った。 今は、夏場なのにチューリップや桜が綺麗に咲き誇っている。一体なぜなんだ? と、考えていると 「君、熱心だねー。もしかして、なぜこの花は夏に育ってるのか分からない…とか?」 「あ、はい。なぜなんですか?」 「それはね、生命一つ一つに存在する水分を他の自然の力と混合させているからと言われているんだよ。」 「混合…。ということは、他のここで咲いている夏秋冬の花も同じなんですか?」 「ああ、そうだよー。 それにしても、君どうしてそんなに興味津々なの?」 「いや、植物が季節外にも咲いているのが信じられなくて…。」 「なるほどねー、確かに驚きだよ。まぁ、とにかくゆっくりと回って楽しんでくれ。」 「はい、ありがとうございました!」 俺に、気づきを与えてくれた恩に精一杯の礼をした。 (これで、何となくやり方が分かってきた気がする。) そうして四季の花、全てを見て回ったあと皆と合流しお昼を食べた。 「お花を見ながらご馳走なんて、贅沢すぎるねー。」 遥花が満面の笑みで、陽都に笑いかけていた。 「そうだね、遥花。」 2人って、いつの間に仲良くなっていたんだな。 (なんか、ああいうのいいな。) 妹に先を越されたのに少し、嫉妬しながら横目に夏海を見る。 (切なげに、花を見ている彼女はとても綺麗…というよりどこか深い所にいる悲しい人みたいな感じだなぁ。) と、見惚れている所にさっき注文した料理が並べられた。 「お待たせいたしました。こちらがご注文の品でございます。」 「「「「ありがとうございます。」」」」 空腹の俺たちは、沢山食べたあと少し歩いてからバスへと戻った。 その後、サッカー観戦をしたりお土産を買ったりなどして泊まるホテルに着いた。 「今日は、お疲れ様でした。疲れをゆっくりと温泉に入って癒してくださいね。部屋分けは、校長先生との話し合いのもと男女自由です。 しかし、問題を起こすようなことはくれぐれもしないようお願いします。」 「「「「はい!」」」」 返事をして立った。すると、陽都が 「せっかく、男女自由ならこのメンバーで泊まらない?」 「いいと、思うよ!」 遥花が、少しぎこちなさそうに俯きながらそう言った。 (あんなに照れるなんて、やっぱり何かあるのか?) 「まっ、いいんじゃない?」 何かを察した夏海は、遥花をフォローしていた。 「じゃ、決まりだね。」 陽都は、ニッコリ笑ってホテルの鍵を貰いに行ってくれた。 「ありがと、鍵。」 「いえいえ〜。」 そして、部屋へ向かった。 中は、脱衣所とトイレ以外いくつかの襖に別れていた。 ここは、珍しく和式のホテルなんだ。 「じゃ、こっちの畳は男子チームが使うからそっちの広い方は女子チームが使って。」 俺は、そう言って荷物を使う分だけキャリーケースから取り出した。 それを見た皆も、荷解きを初めお風呂の準備に取り掛かった。 「お風呂は、レディーファーストでいいよ、ね? 紫苑。」 「あぁ、構わない。」 やっと、4人だけになり髪をかきあげてピンで止めた。 「やっぱ、紫苑こっちの方がカッコよすぎだよ!」 「うるせぇよー、そんな事ある訳ないだろう…。」 「もー、紫苑はいつもネガティブなんだからさー。」 痴話喧嘩を見かねた2人が、 「2人ともいい加減やめなさいよー。とにかく、私達お風呂に入ってくるから喧嘩しないでよ!」 「「分かった…。」」 そして、陽都と2人きりになった所である質問をした。 「あのさー、陽都って遥花の事好きなのか?」 「なんで?いきなりそんなこと聞くんだ?」 (一瞬、同様したようにも見えたが…。) 「何となく、そんな気がしたから。」 「そっか、もしそうだったとしてもきっと結ばれることはないよ…。」 いつにも増して、真面目な表情は何か言いたげな顔をしていた。 「なんで、だ?」 「なーんて、真に受けすぎだよ紫苑〜!あんなの冗談に決まってるでしょー。」 「そーか、冗談には見えなかったけどな…。」 「もー、忘れて!」 結局、よく分からなかったがまぁ好きなんだろうというのは何となく…。 すると、夏海と遥花が浴衣姿であがってきた。 「お風呂、上がったよー。」 「あ、お兄ちゃん。やっぱり、その髪型似合ってるねー!」 クラスのメンバー以外のこの4人でいる時は、気を許してお兄ちゃんと呼んでくれる。 そんな、可愛い妹を持てたことに感謝しかない。 「ありがとう、遥花も浴衣似合ってるよー!」 兄妹で、ほんとに良かった。 そんな会話を聞いていた、2人は 「「ブラコン、シスコン?」」 と、同タイミングで言っていた。 「「ち、ちがうし!」」 少し、照れ気味に言ってしまった。 俺と遥花のその反応を見て、陽都と夏海はなんか一瞬、雰囲気が変わった気がした。 「とりあえず、風呂行くぞ陽都。」 「あ、うん。」 足早に、脱衣所へ向かい服を脱いだ。 そして、頭を洗いほのかなレモンの香りがする湯船に浸かった。 この湯船には何か特別な効能でもあるのか、疲れが癒えていく。 陽都も同じようにして隣に浸かった。 「あのさ、さっきはごめん⋯はぐらかして…。」 「あ、いや俺の方こそ無理に聞こうとしてごめん。」 「ううん、本当は俺遥花の事が好きなのかもしれないね。だって、なんかこう胸がギューッと閉まるような感覚があの子を見てると感じるんだよ。」 「そうか、俺は夏海が好きだ。あの時嘘ついた。 だって、恥ずかしいだろ。陽都に照れた顔を見せるのは…。」 「そーお?」 「うん。でも、とりあえず仲直り。」 そう言って、手を差し出した。すると、優しく握り返してくれた。 その時、 ドクンッ ドクンッ と、震えるようなものが体に伝わってきた。 な、なんなんだ。これは…? 俺は、そこで気を失った。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ ものすごく長い、夢を見ていた。 誰かが⋯。 黒い服を身にまとい、あの時と同じ刀の様な物を持って必死に使いこなす練習をしている。 顔は見えないが、何かのためにボロボロになるまで術を学んでいる。 なんか、少し俺に似ている気がしたが違う。 しかし、父さんの仇であるのには変わりないようだ。 なんで、今なんだ⋯。 しかも、陽都と手を握った後に⋯。 ボヤーっと夢から遠ざかっていく。遠くから、声がきこえるような…。 「おい、紫苑ってば!おーい、紫苑。聞こえるか?」 「うっ、痛い。」 頭がガンガンするような痛みが走った。 「良かった、目が覚めたぞ皆。」 すると、遥花が勢い良く襖を開けてこちらへ駆けてくる。 「もー、お兄ちゃん!心配したんだからぁ!!!」 遥花が飛びついて来る。その目からは、涙が伝っていた。 「あぁ、ごめんな。」 なだめていると、 「私も忘れないでもらえる?」 夏海が上から見あげてそう言った。 「悪い…。」 「とにかく、無事で良かったよ。」 「ありがとう。」 そう言って、皆と夜ご飯を食べにリビングみたいな場所へ行き、いっぱい食べた。 「あー美味いな!」 「そうだね!」 (遥花も、もりもり食べていて可愛い。やっぱ俺、シスコンなのかもな笑) とりあえず、栄養補給のために伊勢海老の刺身やパエリア、寿司などを平らげた。 そして、歯磨きも済ませ皆、睡眠を取った。 ˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩ 最終日の今日は、学年皆で映画を見に行くことになった。 ジャンルは、恋愛かアクションの2択らしい。 だが、圧倒的に女子率が高く恋愛映画の方がダントツで多かった。 まぁ、仲のいい人と隣に座れるのは少し助かる。 と、思っていたんだが…。 まさかの夏海が隣で、胸がトクンッと鳴った。 (やばい、俺の心臓が持たねーよ…。) 徐々に、照明が消えていく。そして、椅子が180度に傾いた。 気を逸らすために、スクリーンを見る。 主な内容は、昔から一緒の幼馴染3人が大きくなるにつれて恋という感情を互いに抱きはじめて苦しい恋へと発展してしまうみたいな話。 途中、浜辺で告白をするシーンがあり両思いになった2人が手を繋ぐシーンがあった。 俺は、生唾を飲んだ。 (夏海と手が繋げたらどれだけ幸せなんだろうか…。) バレないようそっと、夏海を見る。 すると、目がバチッと合い思わず目をそらしてしまった。 (感じ悪かったよなー。) と、後悔していると手に温もりを感じだ。 なんだろうと見てみると、夏海が俺の手を握っていたんだ! 脈が早くなっていくのが分かる。 それと同時に、このままでいられたらいいのに…なんて甘い事を今は考えていた。 ー叶うはずもないなんて、俺はまだ分かっていな かった。
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