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5. 恋愛成就
修学旅行が終わり、俺はついに決意をした。
夏海に告白をする⋯と。
あの映画館で手を繋いだ時、俺は改めて夏海の事が好きなんだと気付かされた。
今まで、『幼馴染』という関係を壊したくなくて想いを告げる事を恐れていた。
でも、それって自分への言い訳をしているんじゃないかと思い始めたんだ。
夏海は、俺の事をどう思っているのかは分からないけど⋯せめてこの気持ちだけでも本人に知っていて欲しい。
たとえ、関係が崩れてしまったとしても⋯。
˚✩∗*゚⋆。˚✩☪︎⋆。˚✩˚✩∗*゚⋆。˚✩⋆。˚✩
休養処置日が終わり、俺はどうやって告白をするかを考えていた。
新たな一歩と言うのはかなり手惑うものだ…。
また、いつものように髪を下ろし眼鏡をかける。
授業中も休み時間も考え続けていた。
そして、俺のプランが完成した。
まず、一緒に帰らないか?と誘う。
次に、帰りがけ通る夕日が綺麗に見える密かなスポットへと寄り道する。
それから、恋バナに持ち込んで俺の気持ちを伝える。
(まぁ、全てがこの通りに行くとは思っていないけどな。)
放課後を迎えた頃、
「なぁ、夏海。今日…用事とかあるのか?」
と、聞きに行った。
夏海は、
「ううん、特に用事はないよー。でも、どうしたの?」
「良かったら、久しぶりに一緒帰らないか?」
「あ、それいいね!帰ろ帰ろ〜!」
(良かったー、もし断られたらどーしようかと思った。)
「じゃ、靴箱前に集合でいいか?」
「うん!先行っとくね〜!」
そうして、彼女は俺に元気よく手を振って行った。
(早めに準備を済ませないと…待たせてしまう。)
鞄に、荷物を詰め込んでチャックを閉じる。
そして、背負いながら靴箱まで全力で走った。
「はぁっ、はぁっ⋯お、おまたせ。」
ビックリした顔で、夏海がこっちを見ている。
「どっ、どーしたの?ゆっくりで良かったのに…。」
「待たせるのは…行けないと思って。」
すると、フッと微笑んでいた。
「ありがとう、でも無理はしちゃダメだよ?」
「あ、あぁ。」
呼吸を整え、靴を履く。
「それじゃー、行こっか!」
「そうだな!」
俺達は、校舎を出て正門を後にした。
「それで、どこに行くの〜?紫苑。」
「俺がよく登下校中に通る場所があって、そこに絶景が見える場所があって…そこに行こっかなーって思ってる。」
「あー、なるほど!楽しみだな〜!」
「エスコートするぜ、夏海お嬢様っ!」
照れながらも俺は、からかうようにして言った。
「なっ!お嬢様なんて、大袈裟だよ…。」
「そんなことないと思うけど?
俺にとっては、夏海は可愛いお姫様なんだよ!」
「なんか、照れるよー。でも…ありがとう!」
互いに照れながらも、気づいたら目的地に着いていた。
まだ、夕日の頃合ではないが、数分くらいと言ったところだろう。
「ね、紫苑。もう少しかなー?」
「多分、あと1分もすれば見えると思う。」
その時だった。
夕日が霧の影響で浮いて見えていたのだ。
「わぁー、すごい綺麗だね!!」
「そうだな!まるで、夏海みたいだよ…。」
(あっ、うっかり言ってしまった…。)
「へっ…!?
紫苑、いきなり何を言ってるのよー!
⋯⋯。
そんなこと言われたら、勘違いしちゃうよ?」
「俺は、勘違いして欲しいって思ってるけど…。」
「それって…?」
「うん、俺は夏海の事が好きなんだ…付き合って欲しいと思っている!お願いします!」
やっと、この気持ちを本人に届けることが出来た。
「うっ嬉しい。ありがとう、紫苑。これから、よろしくお願いします!」
差し出された手をぎゅっと握った。
これが本当に現実なのか確かめるように…。
すると、陽都の時のようにドクンッ、ドクンッという音が俺の身体中を駆け巡っていた。
(なっ、なん…だよ。これは…。)
俺は、地面に倒れ意識を失った。
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また、夢を見ているみたいだ…。
今度は…誰だ?
後ろ姿しか見えないけど、どこか見覚えがあった。
また、黒い服を身にまとっている。
手には、武器…。
釵《サイ》という相手を突いたり、引っ掛けたりなどをする事が出来る武器を持って修行らしいのをしていた。
これは、本当に夢なのか?
と、思っていると以前、陽都と握手をした時の男の子が出てきて何やら構え始めた。
その子も見覚えのある髪型だけど、モヤがかかって見えない…。
その男の子の手には、
スルジンと呼ばれる、鎖の両端に分銅をつけた武器で相手の急所を突き立てたりなどかなり使いこなすのが難しい武器を持っていた。
(珍しいやつばかりを使っているが、どこまで使いこなせるんだ?
もしかしたら、俺達の敵なのかもしれない奴らだ。しっかりと拝ませてもらおうじゃないか!)
2人は、「ヤーッ!」と言う声を上げ走り出した。
と同時に、女の子の方は
「清夏術、『夏霞《なつがすみ》』」
すごく、暑そうな術だ。多分、俺との相性が悪いな。
見ている中では、「青嵐」や「驟」雨などを使うらしい。
一方男の子の方は、
「秋麗術、『星月夜《ほしづきよ》』」
秋のカラッとした風で皮膚を切りつける技⋯厄介だな。
「秋振舞」や「千秋楽」、「上り月」などを使うようだ。
術を互いにぶつけ合っている。
この身のこなし⋯。
強いぞ…。
もし、こんなのが俺らの前に現れたら勝ち目は低いかも…。
(もっと修行を重ねないとだな…。)
また、意識が遠のいていく…。
「紫苑ってば!ねぇ、どーしたの!?」
気が付くと、俺は絶景スポットのすぐ近くにあるベンチに運ばれ、夏海が膝枕をしてくれていたらしい。
「あ…っ、夏海…。俺、どーして…こんな状況に?」
「分かんないよっ!でもね、私と握手をした瞬間に紫苑が後ろへと倒れて行ったの!」
「そ、うだったんだな…。迷惑かけたな、ごめん…。」
「そんなことないよ!
私…無事で良かったって思ってるんだから!」
俺は、起き上がってベンチに座った。
「ありがとな!
とりあえず今日からよろしくっ、夏海!」
「うん!よろしくね、紫苑!」
そうして、俺達は手を繋いで微笑みあった。
これから、更に幸せな毎日が始まる!
ーそう思っていたのに…。
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