3人が本棚に入れています
本棚に追加
12:00
正午だ。
そろそろ嘘の賞味期限。
ここで笑えれば美味しくいただける。
夕方や夜中まで嘘つきっぱなしで誰かを傷つけるのは大失敗。
他人をよこして贖罪なんてどうかしている。
こっちだって負けてられないから。
最初から強気でいく。
「理人とは深い関係なんですか?」
「はい」
はい、だと?
ガツンと頭に何かが落ちた。今日は衝撃が多すぎる。
「理人さんには忘れられない元カノがいると承知で、1か月だけでいいと私から無理に付き合ってもらいました」
「元カノって…」
「さやさんです」
私を忘れられないでいた…!
「仕事で憔悴しきって、辛そうでした。彼が気になって」
牧田の顔が曇っていた。
「私は約束通り1か月で別れました。私のほうも何となく、恋愛じゃないなっ て思いました。
入社してすぐ、理人さんは私を助けてくれたんです。
恩返しがしたかっただけかもしれない」
牧田が配属先の上司にモラハラを受けていることを知り、理人はコンプラ委員会に報告した。そのおかげで牧田は部署移動し、退職せずに済んだという。その上司は社長の親戚で、怖くて誰もが見て見ぬふりをしていた。
「理人さんはずっと苦しんでる。わざと忙しい部署に志望して誤魔化してる
」
「あのメールを送ったのは牧田さん…」
牧田は頷いた。昨夜は、上野で同期会だった。最後に残ったのは牧田と理人。
「理人さんは酔うと、あなたを思い出して返信しようとしていました。でも、できない理由があると断固、しなかった。昨日もスマホを取り出して迷って、途中でうとうとし始めて…」
「あなたが打ったんですね。今、理人はどこにいるんですか?」
牧田は顔をザビエルに向けた。
私は立ってバッグを肩にしたが、牧田が行き手を阻んだ。
「行かせません」
「なぜ?私と理人をくっつけようとしたんでしょ?」
「やることがあるんです」
最初のコメントを投稿しよう!