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03:10
こんな夜中に駆けつけてくれる親友に、頭が上がらない。結衣の結婚式にはマジックも、マツケンサンバでも何でもする。
「結衣、ごめん呼び出して…」
「いいの、ぜんぜん眠れなかったの!心霊動画が怖すぎてさ!」
結衣は会社の同期だ。うちから徒歩10分のマンションに住んでいる。
私の最大の理解者。大学のインターン時代から研修、部署も一緒。
結衣なら信頼できる。
「私なら、今日何か言われても嘘かな?って疑う」
「嘘?」
確かにそうだ。日付は4月1日。
「今、まだ夜だよ。普通は朝からそういう冗談言うでしょ?」
「さやに1年も返信しない人、急には信じられない」
「そうだけど…いきなり気持ち変わる事って全然あるんじゃない?」
結衣が、心霊スポット巡りのチャンネルの動画を見せてきた。
タイトルは画面いっぱいの大きな二文字。
「贖罪」
「しょくざいって何」
「罪滅ぼしってこと」
結衣は動画を開始させた。配信者はひたすら謝り、許しを乞うている。
「今までの心霊スポットは全て偽物でした、ごめんなさいって謝ってるんだけど、見て?」
去年の4月1日が公開日だ。そしてコメント欄には、騙されたわ!はいはい、芝居下手!などと
誰も真に受けていなかった。動画の終わりにテロップで「エイプリルフールです」と太い赤字。
「ごめんとか、やり直そうとか、信じちゃダメ。今日は嘘つく日だよ」
「そんなの、こういう人達だけじゃない?一般人はしないでしょ。意味が分からない」
結衣は、私の肩に手を置いた。温かい。
「私、純と別れちゃったんだよ?理人からのメールに私が動揺して、忘れてないって…なのに嘘なんて、人を馬鹿にしてる!」
結衣は言いづらそうに、でも言い切った。
「理人は噓つきなの」
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