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葬儀や通夜や納骨の諸々が終えてからも、僕は放心していた。
そのまま大学の授業にも出なかった。
「もう梅雨も終わりそうだな。最近は良い天気だよ」
開け放したままのドアから、父が僕の部屋に入ってきた。
「正美(まさみ)ちょっと、おつかいを頼んでもいいかな?」
音楽を聴いていたヘッドフォンを外したら、父に言われた。
「おつかい?子供じゃないんだからさ」
「親からすればずっと子供だよ」
「片方になったけどね」
「夫婦は永遠に夫婦で永遠に両親だよ」
「のろけてるのか、励ましてるのか、どっち?」
「両方」
「まいったなあ、それで?おつかいって?」
「タバコ屋まで」
「切れたの?自分で行きなよ」
「タバコじゃないんだ」
「タバコ屋なのに?」
「行けばわかるよ」
そうして父は細長い茶色の封筒を出してきた。
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