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「…実はさ、俺、彼女ができたんだ」
照れくさそうに顔を真っ赤にしながら、それでも嬉しそうな顔で雄征は言う。
「え…?……彼女?」
「うん……」
予想もできなかったその発言に頭が真っ白になる。言葉を失う。雄征に、彼女…………あの雄征に、彼女が………?
「この前の陸上部の部活の時に、マネージャーの子から告白されたんだ。大会の度に俺のことをいつも熱心に応援してくれてたし、目が合うといつも嬉しそうに笑ってくれてたんだ。だから告白されたのも嬉しくて付き合うことにしたんだ」
「…そう、なんだ…」
「ほら、俺達って兄妹みたいに育ってきただろ?だから、照れくさかったんだけど、優乃佳には絶対に一番に教えないとって思ってたから。今日話すことにしたんだ」
雄征の言葉が、話が、遠い遠い他人事のようにすり抜けていく。
あんなに大好きな雄征の声も今はこれ以上聞きたくなくて、耳を塞ぎたくなる。嬉しそうなその表情にも胸が苦しめられる。
好きで好きでときめていたのに、今はズキズキと胸が痛くて苦しくて、何も考えられない。
「……そう、なんだね…」
「ごめん、驚かせた?」
「……うん、ちょっとびっくりしただけ」
「そっか…そうだよな。いきなりでごめん」
本当にだよ。いきなりすぎるよ。…私、今日ずっと雄征といられて楽しくて舞い上がってたのに。
「……ううん。大丈夫」
「…それで、優乃佳の話しは何だったんだ?俺はもう話せたから、優乃佳の話しも聞かせてくれよ」
私の話…。私の話って何だっけ…。……そうだ、テーマパークに一緒に行きたかったんだ。でも彼女ができたんだもんね。そしたら行けないよね。
だからもう……
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