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「私、知っているのよ……あなたがこの結婚のせいで恋人と別れる事になったって……だから本当はあなたの方がこの結婚を苦痛に感じているんでしょう?」
夫は、目を見開いて私を見る。
「私がその事を知らなかったとでも思っていたの?世間知らずのお姫様には、隠し事など容易いとでも?」
言いたくても言えなかった、言ってはいけないと必死で抑えていた言葉たちが溢れ出す。もう、止められない。
「私は、たとえ親が決めた相手であろうと、誠実に、妻としての役目を果たそうと誓ったわ。あなたが他の誰かに心を奪われていようと、そんなあなたごと支えていけばいいのだと、それが私の役目なのだと……」
私の心は、今にもちぎれてばらばらになりそうだった。目頭が熱く、涙がこぼれ落ちそうになり、慌てて拭う。泣き顔など、見せたくなかった。
そして私は、一番言いたくて、一番言ってはいけない言葉を口にした。
「この結婚がうまくいかないのを、私のせいにしないで……」
私は両手で顔を覆い、その場にへたり込んでしまう。涙はもう、止まらなかった。
息を飲むような音が聞こえたような気がした。でも、それだけだった。夫は、私に声をかけることもない。でも、急に私の肩に手が触れ、私の体は恐れと悲しみにビクッと震える。
「……すまない」
夫の手はすぐに私の肩から離れ、そして、それ以上何も言わないまま、部屋を出ていってしまった。
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