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1.死神の僕
「次の死者は……おだくら、えいし……、小田倉瑛士、だね」
――死神。人は僕を見て皆そう呼んだ。
いつ死神になったのかや、死神になる前に何をしていたのかはわからない。
僕がするのは死ぬ間際の相手の前に現れて、今世に未練が残らないようひとつだけ願いを叶えるということだけだった。
“同じ時間の繰り返し”
でもそれで構わない。
これが僕のやるべきことだったから。
今から送るのはとある飼い犬だった。老衰。
この子の願いは最期にもう一度家族と散歩に行くことで、年齢を重ねて足腰が弱っていた体を一時的に補助し散歩へと行かせてやる。
そして最期の散歩が終わったのを確認し、お別れの挨拶を促した。
この子が家族とお別れをしているのを横目で見ながら次の死者を確認していた僕は、ふぅ、と小さく息を吐いてたった今家族に看取られた犬を死後の世界へと送る。
これでひとつ、任務完了。
“次は人間か”
一般的に最も下等だとされる人間という種族を嫌う仲間は多い。
自分がもうすぐ死ぬことを知ると罵倒し、騒ぎ、逃げようとする。
全て無意味であり、運命は変えられない。
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