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5.それは、決断の時
何気なく声の方へ視線を向けると、小さなボールが公園から飛び出してくる。
“キャッチに失敗したのか”
そう思った僕は、道路に飛び出していったそのボールを追いかけて――
「ましろ!!」
キキーッという不快な音と、僕の名前を叫ぶ瑛士の声。
突然視界が眩しくなり、そして強く腕を引かれたと思ったらお尻からどてんとひっくり返る。
それと同時にドンッと鈍い音が響き、何故か倒れている瑛士からじわじわと赤い血が流れ出す。
何が起こったのかわからず、まるでスローモーションの世界に閉じ込められたようにその光景を呆けて見ていた。
瑛士に買って貰った真っ白のスニーカーに赤が滲むのを見て、やっと覚醒する。
「瑛士!」
彼の血で滑りながらもなんとか駆け寄ると、こんな状態だというのににこりと微笑む瑛士。
「なんでこんな……っ」
「痛いところは、ないか」
「ない!」
そもそも僕は車に轢かれても刃物で刺されても死なないどころか痛みだって感じないのだ。
それなのに、それを瑛士だって知っているはずなのに。
「な、んで」
「好きな人を守れて、うれ……しい」
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