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突然包丁を持って僕を刺した人もいたが、死を扱う僕たちが死ぬはずもなく、淡々と処理をした。
“嫌う気持ちもわかるな”
でも僕はそんな人間が嫌いではなかった。
そうやってみっともなくあがき生に執着する彼らは、そう悪いものでもないと感じていたからだ。
「そろそろ行こうかな」
もう死後の世界に行ってしまった犬を想い涙を流して縋る彼らを眺めながらバサリと羽を羽ばたかせた僕は、そんな彼らに『やっぱり、悪いものでもない』とそう感じながら次の死者、小田倉瑛士の元へと飛んだのだった。
◇◇◇
「こんにちは」
「……は?」
食事を作ろうとしていたのかキッチンで玉ねぎを刻んでいる小田倉瑛士に声をかける。
次の死者である彼には今、僕の姿が見えているだろう。
“あ、また刺されるかな”
痛みなどは感じないが、刺される感覚というのはあまり心地いいものではないことを思い出し内心ため息を吐く。
だが説明義務は果たさねばならない。
「君はあと一週間で亡くなります。この事実は変わりません」
「……」
「最期に望みはありますか?」
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