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「僕は本物の好きな人じゃ」
ない、と言おうとした僕の言葉を遮るように小さく首を振る。
「日常を、一緒に過ごしてくれて嬉しかった」
「そんなこと」
「にこにこと食べる姿が、可愛かった」
「それは、美味し、かったから」
瑛士と食べるその全てが楽しく、美味しかったから。
「最期まで側に、いてくれて……あり……が……」
「ッ!」
ダメだ、このままじゃ瑛士は死んでしまう。
「まだ、まだ二日あるだろう!?」
諦めないで欲しくてそう言うが、もう声が出ないのかただ微笑む瑛士を見て視界が滲む。
――嫌だ、嫌だ嫌だ嫌だ
「失い、たく、ない」
気付けば彼の唇へ僕の唇を重ね、飲ませるように唾液を流す。
そのお陰なのか、頭から流れていた血は止まっていた。
“でも、足りない”
唾液ちまちま流し飲ませているよりも彼の命が尽きる方が早い。
一時的に死へのカウントダウンは止まったようだが、動きだすのも時間の問題だった。
「もっとたくさん、もっと深く交わらなくちゃ」
もっと奥で交わらないと、手遅れになる。
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