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最終話:これから先の人生も
「あ、ぅん……ッ、はぁっ、ん」
まだ日中で明るい室内に、ばちゅんばちゅんと卑猥な音が響く。
肌と肌がぶつかる音や、体液が混ざりナカをかき混ぜるような水音。
そして僕の口からは自分の声とは思えない甲高い嬌声が溢れ出る。
“こんな時に気持ちよくなっちゃダメなのに”
それなのに、瑛士と体を重ねるという行為が僕の心を甘く震わせ、そして彼の意識がなく同意もない状態でこの行為に及んでいるという事実の虚しさで胸が締め付けられる。
「人命救助、だから」
死へと誘う立場の僕が使うには余りにも皮肉が利きすぎているその言葉が、自然と自身の口から出たことに思わず苦笑が漏れたのだった。
「う、ん……」
「瑛士!」
ずっと固く閉じられていた瞼がピクリと動き、彼の黒い目がうっすらと開く。
“意識が戻ったんだ!”
「ま、しろ? なに、して……、ここは……?」
まだ意識が覚醒していないのか、ぼんやりとした彼の視線。
だがその視線がちゃんと意思をもって僕を見ている。
「良かった、瑛士……」
「え、……え、ましろ!?」
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