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その事に安堵し、そして緊張の糸が切れた僕の意識はそこで途切れたのだった。
「……っ、?」
「ましろ! 起きたのか?」
意識を失ってからどれくらいの時間がたったのか。
窓から夕陽が差し込んでいるところを考えると三時間前後だろう。
「そうだ、瑛士っ、体は!?」
「俺は傷ひとつない、痛いところもない」
「そうなんだ、良かっ……、――あ」
焦って起き上がり、僕の顔を覗き込んでいた瑛士の肩を掴んだ僕はすぐにハッとする。
“寿命が、見えない”
体を重ねる前には当たり前に見えていた命のカウントダウン。
それが今は、まるで最初からそんなものなかったかのように何も見えなかった。
慌てて翼を出そうと力んでみるが、それすらも出る気配がない。
“疲れてるだけ?”
――いや、違う。
自身の事だからこそわかる『喪失』。
瑛士を助けるために、僕はもう死神ではなくなってしまったのだとそう確信した。
「あ、はは……」
「ましろ?」
「僕は」
体が重い。確かな質量を感じる。
パチン、と思い切り自身の頬を叩くと、じんっと熱く痺れたような痛みを感じた。
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