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そんな僕の手をそっと握った瑛士は、じっと僕の顔を覗き込んで。
「――もう一回キスから、始めていいか?」
なんてピュアなことを言い出した。
「キス、から?」
「だってその……」
少し歯切れ悪く言う瑛士に一瞬首を傾げた僕は、すぐに理由を察してハッとする。
勝手にさっきしたあの行為は、僕にとっては死神としての力を瑛士に注ぐためのものだった。
けれど、生物からしてみればあの行為は生殖行為。
その生物の中でも人間はその生殖行為を生殖のためではなく、愛を確かめるために行うということも記憶の中で知っていた。
“つまり、僕は一方的に瑛士に愛を伝えていた、ということ?”
そのことに気付き、じわりと頬が熱くなる。
そしてそれと同時に、彼は死神ですらなくなった僕の責任を取り幸せにするとまで口にしていた。
そう、きっと今の僕たちは一方的ではなく互いに愛を確かめるタイミングというやつではないだろうか。
やっとそこまで思考が進み、そしてだったらと気恥ずかしそうにしている瑛士を自身が寝かされていたベッドへと無理やり引きずり込む。
「理解した。キスから、始めよう」
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