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死にたくないと発狂するか、錯乱し僕を攻撃してくるか。
怯えて泣き出すかもしれない、なんて想像しながら彼の反応を待つ。
しかしいくら待っても何も反応がなく、怪訝に思った僕が小田倉瑛士の様子を窺うと呆けたままの彼がやっと口を開いた。
「天使、か?」
「え」
“て、天使?”
まさかそれは僕のことなのだろうか。
過去死神と呼ばれたことこそあるし現に死神の僕を、天使と表現する人間がいるとは思わずぽかんとしてしまう。
「どちらがといえば死神です」
「死神? 鎌は?」
「鎌?」
「死神といえば鎌で命を刈り取るものじゃないのか」
“そんな伝承があるのか”
人間側が作り上げた幻想か、それともその伝承を残した人間にはそう見えたのかもしれない。
僕らの見た目は死を迎えた相手と同じ形態を取ることが多く、犬なら犬の、猫なら猫の姿になる。
共通しているのはこの大きな翼だけだった。
きっとその姿を表す段階で何らかの食い違いが発生したのだろう。
死への恐怖を表現するために描き足した、とかかもしれない。
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