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2.仮初の恋人
「……恋人が、欲しい」
言われたその言葉にきょとんとしてしまう。
“欲しい?”
「誰か好きな人がいて、告白したい……とか?」
「いや、そういった相手はいない」
最期に恋人に会いたいや、想い人に気持ちを伝えたいといった願いは過去にもあったが、好きな人すらおらず恋人だけを欲するパターンは初めてで唖然とした。
「えーっと、その、付き合いたい相手とかは」
「いない」
「そ、そうか……」
“めぼしい相手がいないのにどうすれば”
流石にこのパターンは想定外で、どうやって未確認の恋人を連れてくるか頭を抱え――……そして、ある結論に辿り着いた。
「その恋人って、僕でもいいのかな?」
僕なら見た目を彼の好みに変えることが出来るし、恋人として振る舞うくらいは可能だろう。
むしろ好きでもない相手に告白して恋人の座を狙うよりもずっと効率的だと思った。
“まぁ、小田倉瑛士がいいなら、だけど”
だがその心配は杞憂で、彼の頬がじわりと赤く染まったのを見て僕は何故か安堵する。
「じゃあ、今から僕たちは恋人同士だよ。あと僕の見た目だけど、君の好みに多少は変えられるんだけど」
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