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「冗談だよね?」
「そう思ってくれていいよ」
ミニブタは微笑みながら答えた。
「でもさ、例え夢の中でも、ひとんちの冷蔵庫の中のものを食べるのは良くないよ」
笑顔で澄ますミニブタのその目の奥に、じっとりとした何かがあるような気がして、ウサギは何も言うことができない。
窓の外をクラシックな国産車が走って行く。
誰かのスマホが机の上で震える音、スニーカーの軽い足音、コーヒーメーカーのバキューム音…。
数分後、冷静さを取り戻したウサギが、再び口を開いた。
「夢のことだよ」
「うん。全部夢だね」
ミニブタが神妙な顔で相づちを打つ。
そして、二人は親し気に声を出して笑い合った。
コーヒーの香ばしいにおいが立ち込める店内は、休日らしい、のんびりとした空気が流れている。
(完)
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