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案の定というべきか、委員会活動が終わるまで、伊東は幾度となく悪戯をしかけてきた。それは決まって、僕の机に後ろから投げ入れられるノートの端に書かれた『予言』とともに始まって、全てにおいて伊東の言う通りになった。
それらは全て、僕の心臓に弱いものばかりで、奥の奥に押し込んだ何か熱いものに、僕の防波堤はがたがたと揺らされた。それを僕はなんとか力づくで押し込んだ。
そして、なんとか耐え抜いた、それで今日は終わりのはずだったのだ。
気がついたら、僕は空の下で伊東に連れ回されていた。
三神はクレープが食べたくなるよ、なんて予言という名の無理強いから始まり、買い物がしたくなる、だとか、映画が見たくなる、だとか自信満々に言ってのける伊東を、僕はなぜか拒否できずにいた。
いや、なぜか、ではない。
自信満々に僕を連れ出したとき、愉快そうに僕を揶揄ったとき、そしてそれが成功して、猫みたいな目をゆるく細めたとき、僕は何度でも心が浮き立つと同時に、ずしりと重い衝撃が心臓を直撃したような心地がした。
何をしていても、伊東は特別に可愛い。学年で一番可愛いと言われるあの子よりも、美人と有名な女優よりも、僕にとっては誰よりも特別に可愛いのだ。
ただクラスの可愛い子と話せて嬉しい、それ以上の気持ちを伊東に抱いていることを、僕の心は認めてしまった。ずっと気が付きたくなかったのに、エイプリルフールのせいで。
始まる前に、終わる感情だ。叶うはずないのだから、終えないといけない感情だ。
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