ありがとうね。

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「あそこはね、元々野良猫の死骸が沢山あった部屋だったんだよ」 あの後から数日後、僕は大家さんに話したい事があるから、と招かれた部屋でじっと耳を傾けていた。  あの後、友達と男性二人を介抱しているところに、警察がやってきた。最初、近隣住民様達の迷惑になってしまったのかと焦ったが、そうではなかった。  友人と男性二人は悪質なマルチ商法だったり等数々な悪事を中学時代から繰り返していた常習犯だったのだ。……動物虐待も、その一環だったらしい。僕が住んでいた部屋に、大家さんは鍵を忘れてしまった時、友達とあの男性二人は無断で入った。そして、野良猫達を面白半分で痛めつけ、虐待死させていたのである。当時は、証拠が不十分で逮捕までには至らなかったが、今までやってきた悪事から芋蔓式で悪事はバレる事になるだろう。何となく、そんな感じがする。  あとこれも分かった話しだが、男性二人は友達とは舎弟? みたいな関係性であり、引っ越しバイト等の働き口を複数持って、お金を貢いでいたらしい。あまり、よく分からない関係性だった。 「てっきり、不動産屋さんから情報が行ってると思ってたんだけどねぇ。初日で確認する事を忘れていたよ」 「いえ、そんな……」 「あんな部屋じゃ、住むのも気持ち悪いだろう? 引っ越すのかい?」  僕は、静かに首を横に振った。 「大丈夫です、多分、もう、猫ちゃん達は来ないと思うんです」 嬉しい反面、寂しいですけれども……。  僕は大家さんに笑いかけると、また耳の中で「にゃおん」という声が聞こえた……ような気がした。
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