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表情を変えず、ゆっくりと公園を後にする。狼狽えたり走って逃げたりしたら、あいつらを喜ばすだけだから。
ゆっくり歩いて、街はずれの高台に向かった。見晴らしがいいけれど、実は知る人ぞ知る、自殺の名所。大きな木の切り株に座って、街を見下ろしながら考えた。ああ、あれが学校。そしてあれが私の家。何もかもが小さくて、まるでおもちゃのよう。
でも、おもちゃじゃない。たくさんの人が暮らしている。これだけ多くの家があって人が住んでいるのに、どうして誰も私を気にかけないの。
「さて」
そう呟いて、唾を飲んで、柵をまたごうとしたとき。
「ねえ!」
突然声を掛けられて、ドッキリして飛び上がった。
***
振り向くと、高校生くらいの女の人が腕を組んで立っていた。
「あんた、飛び降りる気? やめときなよ」
「関係ないでしょ!?」
むっとして言い返し睨みつけたけど、彼女は全然気にしてないようだった。
「あたし、占い師なんだよね」
「え?」
突然関係ないことを言われて、呆気にとられた。目が点。その先が気になって、じっと相手の顔を見つめる。
「だから、あたし占い師で。不思議な力があるの。人の寿命なんかもわかっちゃう。あんた、飛び降りるつもりみたいだけど、飛び降りても死ねなかったら、すっごく痛いよ。そんなの嫌じゃない? どうせもうすぐ寿命が尽きて死ぬんだから、それまで待てばいいじゃん」
「え? 死ぬ? 誰が? 私が?」
ぎょっとして思わず聞き返すと、彼女はおかしそうに笑った。
「なんでそんな不安そうな顔するの? 死ぬつもりだったんでしょ?」
「そりゃ、そうだけど…」
「ま、とにかくさ。あんたの寿命は間もなく尽きるし、だから今わざわざ死ぬことないって。何なら、原因作った連中にガツンと一発食らわしたっていいんじゃないの?」
そう言われて、心が揺らいだ。もうすぐ死ぬ。お別れ。…だったら、確かにね。最後にガツンとやっていいかもしれない。
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