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「なんだ、それなら我々が動く必要はないだろう。この状態でも大統領のジョークとしては成立しているじゃないか」
「いや、大統領はこれで満足するようなタマじゃないな」
シルバーの発言を否定したのは、イエローだ。
「俺のプロファイルでは、彼はとにかく目立ちたがりで、人に注目を浴びたくて仕方がない男だ。要するに、あっと驚かせるパフォーマンスをぶち上げたいのさ」
「イエローの言う通りでしょう。間もなく大統領選が近づいていますし、国民の心を掴む機会だと捉えているのでしょう」
バイオレットが冷静にそう付け加えた。
「自分のポケットマネーとはいえ、こんなくだらないことに浪費する男を支持するかね」
「真面目過ぎる堅物より、話の分かる男の方が魅力的だと思いますが」
バイオレットが言うと、シルバーがなにか言いたげに俺を一瞥した。堅物を絵に書いたような彼女がそういう話をするのが珍しいのだ。
「まあ、いい。それで、そのパフォーマンスとやらは何をすればいいんだ」
「大統領は女神をバカンスに出すって言ったんでしょ。なら、観光地に彼女を連れ出して、目撃してもらいましょうよ」
ローズが楽しそうに言うと、隣のバイオレットの肩に手を置いた。
「……わたしに女神になれと?」
「サイズはちっちゃくなるけど、あの格好なら目立つと思うよ。間違いなくバズるんじゃないかな」
嬉々として言うローズとは対象的に、バイオレットは顔色一つ変えない。ローズは変装とメイクの達人で、老若男女問わずどんな姿も再現させてみせる。女神像の姿を変装と呼んでいいのかは疑問だが。
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