エイプリルフールの思い出

1/1
前へ
/1ページ
次へ

エイプリルフールの思い出

「貴方のことが好きです!俺と付き合ってください!」 高校2年生になる4月1日。 俺は満開の桜の下で想いを寄せている仲の良いクラスメイトの女子に告白をした。 「まずは気持ちを伝えてくれてありがとう。でも……今日は何の日か知ってる?エイプリルフールだよ?罰ゲームか何かで私に告白しているんだよね?ごめん、信じられないから。なんか直接嘘でしたって言われるの癪に障るから、また後で嘘だったっていう連絡して。じゃあ、さようなら」 そう言って彼女は帰っていった。 花見デートで告白したら成功率が上がるようなことをどこかで聞いた。 だから、花見デートではないが満開の桜の下で告白したら成功すると思ったのに……違ったみたいだ。 俺は悲しみに暮れながら帰宅した。 彼女は俺にとって凄く大切な人だ。 幸せにしたいと思っていた。 彼女への告白ばかり考えて、肝心のエイプリルフールを忘れていた。 俺は部屋で彼女にこの気持ちが本物だということをどう伝えようか悩んだ。 何か良い方法がないか調べると1つとても良い案を見つけた。 俺は早速行動に移し、花屋へ行きマーガレットの花束を買った。 そして彼女に「明日、今日と同じ場所に来てほしい」と連絡をした。 次の日、俺はマーガレットの花束を持って昨日と同じ場所に行った。 すると少し遅れて彼女が来た。 「昨日嘘でしたの連絡かと思ったら、またこの場所に来てって……一体何?」 「もう一度君に伝える。貴方のことを心から大切に思っています。大好きです。付き合ってください」 そう言って、俺はマーガレットの花束を渡した。 「エイプリルフール終わったよ?えっ……本当なの?」 「本当だよ。その証拠というのは可笑しいけど、マーガレットの花言葉は『真実』『真実の愛』なんかがあるんだ。昨日は……その……エイプリルフールだってこと忘れてたんだ」 そう言って俺は笑った。 「そうだったんだ。昨日はごめんなさい。そして、よろしくお願いします」 そう言って彼女も笑った。 「なんてことが私達の学生時代にあったわね」 隣で俺の『妻』が話している。 「もうやめてくれ……。その時の俺は何してるんだと思ってるんだ」 俺は苦笑いしながら言った。 「でも私、嬉しかったのよ」 「それなら良かったよ。なぁ……今でも大好きだ。毎年渡しているけど、今年もこの花束を受け取ってくれるかな?」 「もちろんよ。ありがとう」 俺は妻にマーガレットの花束を渡した。 あの時の彼女は俺の妻でいてくれてるのだ。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加