幽霊専門

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幽霊専門

人間、いつ死ぬか分からない。たとえ高齢で持病があって、正確な検査を受けても、医者に、あと数年とか、このままじゃ長生きできないとか、曖昧な予定を教えられることも多い。 だから、前日自覚症状なく元気で、翌朝死んだ場合、自分が死んでいると気づかずにそのまま家に居ついてしまう霊がいる。 だから、遺品整理は、幽霊相手の引っ越し業者のようなものだと思う。 その霊を家から追い出すために霊能力はないが俺たちみたいな遺品専門の引っ越し業者がいる。例えば、子供たちがすべて独立して、田舎でひとりで暮らしていた老人がぽっくりと死に、その死んだ老人の息子たちがその家を相続した場合、独立した子供たちにはもう持ち家があり、その親の遺した家を処分しようとしたとき、死んだ自覚のない親の霊が居座っていると普通の引っ越し業者は嫌がって、霊能力ゼロで幽霊に鈍感な俺たちのところに依頼が来る。払い屋に頼んで幽霊を強制的に追い出すこともできるが、親の幽霊と分かっていると、あまり乱暴なことはしたくないという方もいて、霊能力はない俺たちが引っ越し業者として死んだと気づいていない幽霊にあんたは死んだんだよと分からせるために、幽霊に見せつけるように家具を持ち出すと、大抵は自分の死を察して奇麗に成仏する。これは、悪霊として強制的にお祓いするよりも人道的だと思ってる。また、字際に幽霊が家に憑りつかなくても、あなたは死んだんだと遺族自身が気持ちの整理のため俺たちに遺品整理を任せることもある。俺たちがあの世への引っ越しとして家具を片付けることで、死者も遺族も両方とも納得してくれるとありがたい。
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