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真犯人
『真犯人はあなたですね』
ナポレオンはゆっくりと指を差した。
「ううゥ……!」
いったい誰が犯人なんだ。
『水田マリアさん!』
意外なことにナポレオンは水田マリアを指差した。
「えェ、私?」
マリアもあ然として立ちすくんでいた。
「おいおい、彼女が犯人だって言うのか?」
鰐口警部補が眉をひそめた。
「なんの証拠があるって言うんだ。いかがわしい手相占いなのか?」
有野ユウトも納得できないようだ。
「……」ボクも呆れて言葉もない。
「なにがすべての謎はナポレオンに解かれたがっているだ。とんだ茶番だ」
一気に全員からクレームが飛びそうだ。
「これだから探偵ごっこはたくさんなんだよ」
鰐口警部補も呆れたようだ。
『いいえ、ボクが見ていたのは手相ではありません。手にできたタコですよ』
「タコォ……?」全員が聞き返した。
『そうです。水田マリアさんの手にはボルダリングで出来たタコがあるんです』
「なにィ、ボルダリングだって?」
鰐口警部補がマリアの手元を覗き込もうとした。
「……」水田マリアは両手を隠し黙ってうつむいた。
『昔、CMでブレザーを着た女子高生役のロッククライマーが授業中、学校の校舎をスルスルっとスパイダーマンのように登っていくモノがありましたね』
ナポレオンはおどけたように肩をすくめ微笑んだ。
「ああァ、はじめはCGか、特撮かと思ったけど」
ヤンキーの斉木リョウも思い出したみたいだ。
「ウン」
ボクもそのCMに記憶があった。
忍者女子高生と呼ばれたCMだ。
最初は、ボクもCGかと思っていた。
「ぬうゥ、まさか。ベランダから?」
鰐口警部補もようやく気づいたようだ。
『そうです。犯人は部屋のドアにカギをかけ、チェーンロックをほどこし密室にしたんです。そしてベランダからボルダリングの要領で屋上へ登って逃げたんだ。そうですね。水田マリアさん!』
ナポレオンは彼女を名指しした。
「……」彼女は黙ってうつむいたままだ。
観念したのだろうか。
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