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真犯人
「ハッハハッ、くだらないな。今のは子供の妄想だろう。証拠は何ひとつない!」
突然、管理人が高笑いした。
『フフゥン、そうでしょうか?』
「言っては悪いが、風雅ケイジさんの部屋から凶器に使った盾が見つかったんでしょ?」
管理人は鰐口警部補に向かって言った。
「ああァ、そうだ。見つかったけどなァ」
鰐口警部補も目を閉じてうなずいた。
『ええェ、だからですよ。管理人さん!』
ナポレオンは自信たっぷりにニヤリと微笑んだ。
「ぬうゥ、なにがだからだ?」
管理人の武笠はワケがわからない。
『ケイジの部屋に、凶器を忍ばせることが出来たのは、マスターキーを持っている管理人の武笠さんだけなんです!』
「なにィ!」
『それに管理人さん。あなたは今、ご自分が犯人だと認めたじゃないですか!』
「なにを言ってるんだ。別に認めてなんかいない。変な言いがかりを言うな!」
管理人は首を左右に振った。
「いいえ、この部屋での会話はすべて録画録音されています」
石動リオが断わった。
「録画録音?」管理人は眉をひそめた。
『あなたは今、ケイジの部屋から凶器の盾が出てきたと言ったでしょ!』
ナポレオンが管理人に告げた。
「え、だってそうなんだろう?」
管理人はふて腐れたように反論した。
『ええェ、ですが捜査員たちもボクも凶器が鈍器とは言いましたが、凶器が盾だとはひと言も言ってませんよ。ねえェ鰐口警部補?』
「ン、ああァ……」
鰐口警部補も静かにうなずいた。
「なにィ?」
「ホォホホホッあなたは自ら墓穴を掘ったのよ。私たちは誰ひとり、凶器がトンカチともトロフィーとも、まして盾だとも言ってないのよ!」
リオが高笑いした。
「そ、そんなはずは……」
管理人は明らかに動揺したようだ。
「盾が凶器だと知っているのは、あの時、犯行現場にいた水田マリアさんと真犯人のあなただけなのよ!」
石動リオは管理人を指差した。
「う、嘘だ」
しかし管理人は信じようとしない。
『フフゥン、嘘じゃありませんよ。録画してありますから、リクエストしてビデオ判定してもらいますか。ワールドカップじゃありませんから、何回でもリクエストして結構ですよ!』
「ううゥ……」
管理人の武笠も万事休すのようだ。ガックリと膝から崩れ落ちた。
「ホォーッホホホ、おわかり。すべての謎はナポレオンとこの私、石動リオに解かれたがっているのよ!」
いつの間にか、彼女の手柄になっていた。
「ふぅ……」
しかしボクも大きくひと息ついた。
ナポレオンのおかげで事件は一気に解決へ向かった。
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