ナポレオン

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ナポレオン

 ワイドショーでは、稀代の詐欺師、惡岡(ワルおか)アクト殺害事件が解決されたと大々的に報じられた。  報道陣には美人刑事、石動(イスルギ)リオが取材に応じた。  うってつけだろう。  彼女には花があった。  しかしいつの間にか、事件の解決はすべて石動リオの活躍によるものとされていた。  ナポレオンはマスコミで目立つのは苦手だそうだ。  だが事件関係者は知っている。  すべてナポレオンがお膳立てをしたことを。  ようやくボクへの疑いも晴れたので、改めてナポレオンとノアに感謝した。 「ありがとう。キミたちのおかげだ」  一時はどうなるかと思った。  逮捕送検され起訴されれば、99.9%有罪だと言われている。  日本の司法制度では起訴をされれば圧倒的に不利だ。 『おいおい、ノア。キミの家庭教師の先生だからこんな詰まらない事件に関わったんだぜ』  ナポレオンは不満げに嘆いた。 「ああァ悪かったよ。詰まらない事件で」  ノアは苦笑いを浮かべ頭を下げた。 「いやァ、それでも感謝しているよ。ナポレオン君。詰まらない事件でもボクに取っては一生に関わる事件なんだ!」  当事者からすれば、どんなに小さな事件でも詰まらないことなんてない。  殺人事件の容疑者にされるだけで人生を左右するだろう。まして起訴されれば、有罪は確定だ。 『フフゥン、ナポレオンの辞書に不可能と解けない謎はないからね!』  天才探偵は決め台詞でアピールした。 「そうだね。ありがとう。ナポレオン!」  確かに稀代の詐欺師、惡岡(ワルおか)は殺されてもおかしくない。    だがそれでも実際に殺せば報いを受けることになる。    管理人の武笠(ムカサ)マコトと水田マリアには最高の弁護士がついたみたいだ。  もちろんナポレオンが手筈を整えたのだろう。  子供とは思えないほど用意周到だ。  さすがナポレオンの辞書に不可能はない。  おしまい  
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