6人が本棚に入れています
本棚に追加
風雅刑事
ボクの名前はすこぶる変わっていた。
風雅刑事という。
最初に断わっておくが、刑事というのは名前であって本当の警察官ではない。
紛らわしいのでカタカナで表記することにした。
今年、二十歳になった現役の大学生だ。
先日、コンパで飲めない酒を飲んだ挙げ句、厄介な事件に巻き込まれた。
状況的には最悪だ。
ボクはマンションの最上階に住んでいて、隣りは詐欺師の惡岡アクトの部屋だった。
惡岡は息をするように人を騙し私腹を肥やすタイプの悪党だ。
彼の所為で何人もの善良な人たちが犠牲になっていた。
ボクのもっとも憎むべき悪党と言って良いだろう。
その惡岡が殺されたのだ。
しかもボクと掴み合いの喧嘩をした夜、何者かによって殺害されたらしい。
だが、その喧嘩が原因でボクは容疑者として警察に捕まる事になった。
当然だが、ボクはまったくの無罪だ。
自分のことだけに一番よく知っている。
しかしボクには弁護士などの知り合いがいない。
唯一の知り合いが小学生の大和ノアだ。
たまたまボクが家庭教師をして勉強を教えていた。
もちろん小学生に事件の解決を依頼するわけがない。
どうやらノアの友人に天才探偵がいるという噂を小耳に挟んだ。
その探偵は、瞬く間にいくつもの事件を解決したらしい。
にわかには信じられないことだが、たった十秒で事件を解決したこともあると言う。
噂では『十秒探偵』の異名を持っていた。
その天才探偵の名前は『ナポレオン』。
まさにナポレオンの辞書に不可能はないと言うことだろう。
窮地に陥ったボクを助けてくれるのは彼らしかいない。
最初のコメントを投稿しよう!