風雅刑事

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風雅刑事

 ボクの名前はすこぶる変わっていた。  風雅(ふうが)刑事(ケイジ)という。    最初に断わっておくが、刑事(ケイジ)というのは名前であって本当の警察官ではない。  紛らわしいのでカタカナで表記することにした。  今年、二十歳になっただ。  先日、コンパで飲めない酒を飲んだ挙げ句、厄介な事件に巻き込まれた。  状況的には最悪だ。  ボクはマンションの最上階に住んでいて、隣りは詐欺師の惡岡(ワルおか)アクトの部屋だった。  惡岡(ワルおか)は息をするように人を騙し私腹を肥やすタイプの悪党だ。    彼の所為(せい)で何人もの善良な人たちが犠牲になっていた。  ボクのもっとも憎むべき悪党と言って良いだろう。  その惡岡(ワルおか)が殺されたのだ。  しかもボクと掴み合いの喧嘩をした夜、何者かによって殺害されたらしい。  だが、その喧嘩が原因でボクは容疑者として警察に捕まる事になった。  当然だが、ボクはまったくの無罪だ。  自分のことだけに一番よく知っている。  しかしボクには弁護士などの知り合いがいない。  唯一の知り合いが小学生の大和ノアだ。  たまたまボクが家庭教師をして勉強を教えていた。  もちろん小学生に事件の解決を依頼するわけがない。  どうやらノアの友人に天才探偵がいるという噂を小耳に挟んだ。  その探偵は、(またた)く間にいくつもの事件を解決したらしい。  にわかには信じられないことだが、たった十秒で事件を解決したこともあると言う。  噂では『十秒探偵』の異名を持っていた。  その天才探偵の名前は『ナポレオン』。    まさにナポレオンの辞書に不可能はないと言うことだろう。  窮地に陥ったボクを助けてくれるのは彼らしかいない。
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