天才探偵ナポレオン

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天才探偵ナポレオン

 窓から見える空は青く澄み渡っていた。  だが、毎日取調べを受けてボクの心は暗く閉ざされたままだ。  ここはマンションの最上階、九階。  犯行現場となった惡岡(ワルおか)アクトの部屋だ。  ボクの部屋の隣りに位置していた。  (コワ)モテの鰐口警部補らに連れられてボクは実況見分をしていた。 「いい加減にしてください。ボクじゃない。冤罪だ。ボクは真犯人じゃないんだ」  さっきからボクは鰐口と言う(コワ)モテの警部補にすがりついた。  泣き出したい気分だ。 「フフゥン、安心しろよ。もうじき逮捕状が取れるんだ。そうしたらたっぷり可愛がってやるよ」  昔ながらの刑事だ。まるで反社会的勢力(はんしゃ)のような脅し方だ。   「な、逮捕状?」  じゃァ、ボクは逮捕されるのか。  冗談じゃない。  下手をすれば殺人犯だ。  一瞬、グラッとめまいがしてきた。  こんな刑事に狭い取調べ室で脅されたらやってない犯行も自供してしまうかもしれない。 「まァ証拠は揃ってるんだ。風雅(おまえ)以外、犯人はいないんだよ」  鰐口警部補は(さと)すようにボクの肩をポンポンと叩いた。  余裕綽々といった感じで微笑んでみせた。  まるでドラマに出てくる悪役のようだ。 「ううゥ」いったいどうすれば良いんだ。  ボクは絶体絶命のピンチだ。  その時、不意にドアが開いた。 「お待ちなさい。鰐口警部補」  美人女優みたいな女性刑事が現れた。  その背後に少年の大和ノアが続いて入ってきた。 「おおォ、ノア。よく来てくれた!」  まさにボクに取っては救世主だ。 「大丈夫だよ。ケイジさん。ナポレオンがついていてくれるさァ!」  ノアはスマホの着信画面をこちらへ向けた。  そこには青い髪をした美少年が笑みを浮かべていた。  肌が異様に白い。  貴公子みたいに高貴な少年だ。  彼こそ天才探偵ナポレオンだ。
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