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ナポレオン
「いいか。ドアは完全に内側からロックされていたんだ。だから、この部屋は密室状態だったんだよ。唯一、出入りができたのはあのベランダのサッシだ」
鰐口警部補が親指でベランダを指差した。
「……」みんなは黙って聞いていた。
「いいか、風雅刑事。お前は酔った勢いで惡岡を鈍器で殴って殺してしまったんだ。仕方なく内側からドアに鍵をかけ、チェーンロックをほどこして密室にした。そしてベランダ伝いに隣りの自分の部屋へ戻ったんだよ」
鰐口警部補はボクの犯行だと決めつけていた。
「ち、違う。ボクはそのとき部屋のベッドで爆睡してたんだ。マジで惡岡を殺してなんかいないんだ」
「フフゥン、あいにくだったな。誰もお前のアリバイなんか、証明してくれやしないんだ」
「だって酔っ払ってベランダ伝いに移動できるのか。ここは九階なんだ。ボクは高所恐怖症だからベランダから外を見るだけでドキドキしてしまうんだ!」
普段もあまりベランダから下へ覗くことはしない。
「そりゃァ、お前の言い分だろう。酔っ払っていたと言うのも自作自演の演技かもしれねえェし。高所恐怖症も自己申告だろう。いくらだってウソがつけるだろう!」
「ううゥ、そんなことは」
ないと声高に言いたいが、確かに証明はできない。
惡岡と喧嘩になった時の腕のキズが少し疼いた。
『わかりました。ではリオ。惡岡と揉めていた住人と管理人の方をここに呼んでください。リストは送りました』
ナポレオンはまるで部下に命じるようにリオに指示を送った。
「ハイハイ、まったく自己中心的なプリンスねえェ」
リオも嫌々ながらも美少年探偵に従うしかないのだろう。
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