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ヤンキーの斉木リュウ
ほどなく刑事の石動リオの命で事件関係者が部屋へ集められた。
この部屋はマンションの最上階にある九階の904号室だ。
隣りの905号室がボクの部屋で903号室は空き部屋になっていた。
集まったのは管理人の武笠マコトとマンションの住民ら五人だ。
一応、五人とも顔見知りだが挨拶する程度で、どういった性格の人かは知らない。
だがみんな惡岡に何らかの怨みがあることは確かだ。
金髪でヤンキーの斉木リュウはふて腐れた顔でガムを噛んでいた。
肩にはタトゥがあった。怖いのであまり近寄りたくない。
「なんだよ。まだ惡岡の事件を捜査しているのか。あんな詐欺師が殺されたって誰も悲しまないだろう」
確かに斉木リョウの言う通りだが、散々な言い草だ。
『あなたは斉木リュウさんですね?』
リモート画面からナポレオンが訊いた。
さすが天才と言えるだろう。
すでに関係者全員の顔と名前を覚えているようだ。
なにも見ずスラスラと尋問した。
「ああァ、事情聴取なら散々やっただろう。もう良いか。これから彼女とデートなんだよ」
煩わしそうにそっぽを向いて帰ろうとした。
『待ってください。あなたはかつて惡岡と喧嘩をしたそうですね。お祖母様の一件ですか?』
「ふぅん、そうさ。ヤツの『神の水』詐欺でどれだけの高齢者が借金を背負わされて自殺に追い込まれたと思ってるんだよ」
ヤンキーの斉木はナポレオンを睨んだ。
『なるほど。あなたのお祖母様も『神の水詐欺』で多額の借金を背負わされて自害を』
「ああァそうだ。なのに惡岡はそのあぶく銭でキャバ嬢や若い愛人たちと遊んでいるんだ。バーちゃんにはひと言も謝罪の言葉もなくな」
『それで口論から喧嘩になったんですね』
「ああァ、殺してやりたかったが、あいにく誰かに先を越されたんだ!」
チラッとボクの方へ視線を向けた。
「ううゥ……、ボクじゃないですよ」
慌ててボクは首を左右に振った。
割りと斉木リョウは正直にこたえてくれたみたいだ。
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